西浦adventure -]Z- 横たわる扉から落ちた先は、無限に広がる草原。 空を見上げれば、突き抜ける様なスカイブルー。 その空には雲一つ無く、輝く太陽が眩しかった。 草原をひたすら歩き、小さな町を見つけた阿部と三橋。 二人は仲間探し兼、休息をとるべく、その町へと足を踏み入れたのだった───。 西浦adventure -]Z- ──そこは、ルーインという小さな町。 人口は少ないながらも、町人たちは穏やかな生活を送っているようだ。 外では子供がはしゃぎ回り、婦人が洗濯物を干していて。 大きな古井戸の傍らでは、老人三人が腰掛けて談笑している。 「…とりあえず、誰かに話聞いてみっか」 仲間を探すなら先ず聞き込みをするのが最善策だろうと判断した阿部は、前方から歩いてくる青年に話し掛けた。 「…すみません。オレらと同じカッコしたヤツら、見掛けませんでしたか?」 阿部はなるべく丁寧且つ穏やかに訊ねた。 以前水谷に、 「阿部はコワイから、フツーの人はぜってぇ逃げたくなるって〜!」 などと言われたのを若干気にしていたからである。 …勿論、その後水谷は泣きを見る事となった訳だが。 「君ら、旅人かい?いらっしゃい。ここは、ルーインの町だよ」 青年は阿部の質問に答える事無く、それだけ言い残して何処かへ歩いていってしまった。 「……ンだよアレ!?」 阿部は青年の受け答えに憤慨した。 阿部の問い掛けは(丁寧に訊ねたにも拘わらず)完全にスルーされてしまったのだから、当然と言えば当然なのだが。 「あっ、あべく…!ほっ、他の人に聞いて、みよっ…?」 三橋は、今にも額に青筋が浮き出そうな阿部を宥めた。 かなり引け腰になってはいるものの、三橋はだんだん阿部の対応に慣れてきているらしい。 …愛故の努力だ。(此処に至るまで、泣いた事は数え切れない程あるものの) 「チッ……しょーがねェな。…あそこのじーさんに聞いてみっか」 「う、うんっ!」 三橋は座り込んでいる老人の元へ駆け寄り、目線を同じにして訊ねた。 「あ、あのっ!こういう服、着た人、みっ、見ませんでした、か?」 「はい、こんにちは。…ああ、今日もいい天気だねぇ」 老人はそう答えると、また視線を下に戻してしまった。 三橋がもう一度話し掛けても、先と同じ言葉を繰り返すのみだ。 「…?ボケてンのか?あのじーさん」 阿部は又しても舌打ちを溢し、次に話を聞けそうな人物を探した。 その後、婦人に聞いても子供に聞いても、 「今日の夕食は何にしようかしらねぇ」だの、 「僕、サッカー好きなんだぁ!」だのと日常会話が一方的に交わされるのみで、質問に答えてくれる者はいなかった。 「…ったく、どうなってんだよ!?」 阿部は町民たちの対応に腹を立て、舌打ちしながら歩いていく。 三橋は阿部の不機嫌さに困惑(もといビクビク)しながらも、それに続いたのだった。 ──暫くして、日も沈み掛けてきた頃。 「…お兄ちゃんたち、余所者?」 その声に二人が振り向くと、話し掛けてきたのは年端十歳程の少年だった。 少し長めの茶色の髪は真っ直ぐなストレートで、身長は130センチ程。まるで少女の様に可愛らしい顔立ちに、華奢な身体。 そして服装は、水色のシャツとベージュのハーフパンツのみだった。 「こっ、こんにちはっ!あの…キミ、は?」 「僕?僕はエマ!エマ・ルーカスだよ!お兄ちゃんたちは?」 「オっ、オレは、三橋、廉、です」 「阿部隆也」 「変わった名前だねぇ!んーと、レン兄ちゃんとタカヤ兄ちゃんだねっ!えへへっ、よろしく!」 「よっ、よろしく!…え、と……よ、余所者、って…?」 「えっとねー、お兄ちゃんたちは外から来たんでしょ?んと、異世界の人?」 「…なんでわかンだ?」 阿部は怪訝そうに問う。 少し警戒した様子さえ見せながら。 「だって、お兄ちゃんたちにはルールがないみたいだったから!」 「…ルール…?」 三橋が首を傾げながら復唱した。 「うん、ルール!ここはね、全部決められた町なんだよ!」 「決められた町…?どーいうコトだ?」 「んーむずかしいから、後でゆっくり説明してあげるよ!それよりお兄ちゃんたち、今晩泊まるとこ決まってるの?」 「イヤ、決まってねェけど…」 「じゃあさじゃあさっ!ウチにおいでよー!僕、兄ちゃんと二人暮らしなんだあ!ウチの兄ちゃんは物知りだから、色々教えてくれるハズだよっ!それでね、それでねっ!お兄ちゃんたちのお話も聞かせて?」 ね?と首を傾げながら可愛らしく言われ、三橋は思わず笑みを溢した。 そんな三橋を見て破顔した阿部は、その申し出を受け入れたのだった──。 「ここが僕の家だよー!上がって上がって!」 エマに連れられた先は、木造の小さな家だった。 特に飾り気の無い、質素な作りの一軒家である。 「おっ、おじゃまします…」 三橋と阿部は申し訳程度に挨拶をし、家の中へ足を運ぶ。 「兄さんはねーもうすぐ帰ってくるよ!んーと、ホットミルクでいいかな?」 「ああ」 「あ、ありがとうっ」 エマは茶色の髪を揺らしながらトテトテとキッチンへ向かい、暫くすると湯気の立ったカップを三つ持って戻ってきた。 二人はエマに促されるまま椅子に座り、ホットミルクを口に含んだ。 口内に、温かくて優しい味が広がっていく。 「えへへっ!僕ね、兄ちゃんがお仕事に行った後はいっつも一人ぼっちだったから、寂しかったんだぁ!」 「お、お父さんとお母さん、は?」 「んーと、わかんない!僕、ずーっと一人ぼっちだったから! …んー、どーせ死んじゃったんじゃないかなぁ?」 「そっ、そう、なんだ…ごめんね……」 無邪気な笑顔のまま辛辣な言葉を吐くエマに、三橋は泣きそうになりながら謝罪する。 酷な事を聞いてしまったと、後悔しているのだろう。 …だが、当のエマには、ちっとも気にした様子はない。 「あははっ!どうして謝るの?僕は寂しくなんかないよ?だって、僕が一人で泣いてた時、ダイ兄ちゃんが町に来てくれたから! …ねぇ、どうして泣いてるの?レン兄ちゃんヘンなの〜」 「へっ、ヘン……?」 「うん!…あ!ダイ兄ちゃんが帰って来たみたいだ!」 エマがガタッと椅子から立ち上がり、玄関を開けると…そこには、灰色の髪と瞳をした、十代後半くらいの男が立っていた。 「ただいま、エマ。…この人たちは?」 落ち着いた話し方と、グレーのシックなシャツに、黒のパンツ。 だが、その顔立ちにはまだ幼さが残っていた。 「おかえり〜ダイ兄ちゃん!この人たちね、"余所者"だよっ!異世界から来たんだって! こっちがレン兄ちゃんでー、あっちの黒いのがタカヤ兄ちゃん!」 「おい、誰が黒いのだ!誰が!!」 「ははっ!面白いね。僕はダイナ・ルーカスだ。ダイでいいよ。 エマ。ほら、今日の土産だぞ」 「わぁいっ!!羊の肉だあ〜!じゃあ今夜はジンギスカンにしようねっ!」 エマは嬉しそうに羊の肉を抱えて、パタパタとキッチンへ消えていった。 「それで、君たちはどうしてこの町に?」 ダイナはリビングの椅子に腰掛け、頬杖を付きながら阿部と三橋を見上げた。 「オレらと同じカッコしたヤツらを探してンだ。見掛けなかったか?」 阿部はダイナを見下ろしたまま問う。 同い年くらいだろうと判断したのか、敬語は使わない。 「イヤ…残念ながら見てないな」 「そっ、そう…ですか…」 三橋はしょんぼり肩を落とした。 阿部はそんな三橋を慰める様に、背中をポンポンと叩く。 「はは、君たちは仲が良いんだね。 よかったら、君たちの話を聞かせてくれないか?この町では、余所者ってのは珍しいからね」 「あっ、ダイ兄ちゃん!今日、レン兄ちゃんたちに泊まってもらっていいでしょ!?僕、今夜はレン兄ちゃんと寝る!!」 「…なっ!!」 エマの発言に、阿部は驚愕する。 子供と言えども多少ヤキモチを妬いてしまう辺りが阿部である。 「ああ。勿論、大歓迎だよ。好きなだけ泊まっていくといい」 「あっ、ありがとう、ございますっ!」 「どーも。…っつっても、オレらも急いでっから、ンな長くも居らんねェけど…」 「ああ、そうなのか…ふふ、じゃあ君たちがここに居る間は、出来る限りおもてなしするよ。 …あ、残念だけど僕はこれから用事があるから。また夕食の時に」 そう言って、ダイナは隣の部屋へ消えて行った。 「レン兄ちゃん!僕、これから夕飯の準備するから、手伝ってくれる?」 「うっ、うん!オレ、手伝うよっ!」 「…おい、コイツに刃物持たすなよ。危ねェから。あと火にも近付けンな」 阿部は腕組みをしたまま言う。 「え〜?タカヤ兄ちゃんはカホゴなんだねぇ!…ん〜…、じゃあ、レン兄ちゃんはサラダ作ってね!」 そう言うと、エマは夕食の支度に取り掛かった。 その手際の良さたるや二人が感嘆の息を漏らす程で、エマは要領良く次々と調理していく。 する事が無かった阿部は、料理をしながら楽しそうに談笑している三橋とエマを残して、町の散策をしようと家の外に向かった。 …そして扉を開けた後、阿部は酷く驚愕する。 「…なっ!?なんだよ、これ…っ!?」 ……阿部が、扉を開けて見たものは───。 To be continued... あとがき(仝ω仝) 中途半端は私の得意技です/(^o^)\←ヲイ) 前回UPしたヤツは実はあまり楽しく書けなかったので…今回は好き勝手に。←オイ)まあ前回のも必要不可欠なシーンではあるのですが。 …それにしても、私はホンットショタだなと思いました←問題発言) 声はエマ=くまいもとこさん、ダイナ=石田彰さんに脳内変換してお楽しみください/(^o^)\←無理がある) …嘘ですごめんなさい!← でもそんなイメージで台詞書いてます/(^o^)\ ※ブラウザバック機能使用推奨 Text-Long-Menu/TOP |