西浦adventure-]U- スマートに魔法を掛けられ、動物の耳と尻尾を付けられてしまった泉、栄口、田島の三人。 真夜中の喧騒は、未だ静まりを見せずにいた───。 西浦adventure-]U- 「だ〜か〜ら〜…っ!!早く戻しやがれっつってんだよ!!このクソ魔法使いっ!!エセ魔法使いっ!!」 泉は飽きもせずにスマートに喰い掛かっている。口調はどんどん荒っぽくなる一方だ。 浜田は、泉が勢い余って殴り掛かったりしない様にと必死で泉を宥めている。 「ヤーだねー!だってオレ、クソ魔法使いだしー?解き方なんてわかんねぇしー?」 スマートはニヤニヤと笑みを浮かべながら言う。 「…〜〜〜〜っ!!テッメェこの×××××魔法使いっっ!!」 「ちょ…っ!!泉ーっ!!そーゆーコト言うなって!!台詞書けなくなんだろ!!×××××って変換されちまってんじゃねーか!」 「そんなん知るかバカ!!つーかテメーも言ってるっつの!」 泉はとんでもない暴言(放送禁止用語)を吐き捨て(しかも絶叫)、肩をプルプル震わせつつ怒りを露にしている。 因みに周りで聞いていた栄口、水谷、花井の三人は顔を真っ青にしながら泉たちを呆然と見つめていて、田島は「なんか泉がスゲーこと言ったー!!泉かっけぇ!!」なんて言いながら何故か楽しそうにしている。 ダイヤモンドとアランに至っては、 「きゃー!ナニあの子ー!ちょーいーコト言ったわ今!×××××だってあははははー!!」 「うむ!言葉遣いははしたないけれども実に的を得ているね!!ピッタリの称号だぞスマート!!」 …なんて言いながら腹を抱えて大爆笑している。 そしてジオラルドは何も言わずにシンプルで品の良いティーカップに注がれた紅茶をゆっくりと口に含み、その様子を只苦笑しながら見つめていたのであった…。 「…オッマエ、カワイーカオしてスゲーこと言うのなー。…ま!俺はそーゆー威勢のいーヤツもキライじゃねーけどな!」 ニッと笑いながら言うスマート。 泉はちっとも堪えないスマートの姿を見て、更に悔しくなった。 それと共に、何とも言えない敗北感が押し寄せる。 スマートは決して怒ったりしない。挑発に乗ったりなんかしない。 コイツには勝てない、と痛感させる何かを持っている。 泉は「はー」と溜め息を一つ吐き、心を落ち着かせて訊ねた。 「…どーやったら戻してくれんだ?」 「んー?そーだなー、オマエが一晩相手してくれるってんなら戻してやってもいーぜ?」 スマートは泉の左頬をそっと包み込んで言う。 だがその手付きは言葉とは裏腹に丁寧で優しいものだった。 「んなっ…!!テメーざっけんな!!泉はオレんだっつの!!」 聞き捨てならない科白を吐いたスマートに、普段は温厚な浜田が声を荒げて掴み掛かる。 …今にも殴り掛かりそうな勢いで。 そんな浜田を見て泉はほんの少しトキめいてしまったのだが、言えばこの恋人は物凄く調子に乗りそうなので、それは自分の心の片隅(寧ろ奥底)に隠しておく事にした。 「ゲ。アンタそーゆーシュミあったワケぇー?…ちょっとジオ、気をつけなさいよねー。アンタけっこーキレーなんだしー。女ガオだしー」 ダイヤモンドはジオラルドの肩に頭を凭れ掛からせながらそう言った。 長旅疲れで眠くなったのか、ウトウトし始めている。 ジオラルドはダイヤモンドの言葉に、何とも言えない複雑な表情をしていた。 「ジョーダンだって!本気にすんなっつの。 俺はキレーでグラマーなオネーサンが好きなの。男なんか死んでもゴメンだってーの!」 「………じゃあ、どこで何してきたら戻してくれんだ?」 戯けた風なスマートの態度に苛立ちを隠しきれないまま、浜田はこの傲岸不遜男を見下ろして問う。 「……はあ?」 スマートは意味が解らない、と言った様子で浜田をじっと見つめた。 「……っは!はっはっはっはっはっ!! オマエ、まさかゲームみてーにどっか行ってボスキャラ倒してアイテム手に入れてきたら戻してもらえるーとでも思ってんのかよー?」 暫く考え込む様にしていたスマートだったが、突然腹を抱えて大爆笑しながらテーブルをバシバシと叩く。 …バシバシと、容赦無く。 テーブルはミシミシ音を立てていて、今にも壊れそうだ。 「スマート…アンタうちのテーブルぶっ壊したらタロットワークに弁償させるわよー。それでもいーのかしらねー?てゆーか、ドアのお詫びもしてもらわなきゃねー」 ダイヤモンドは少し頭を起こして言った。 因みにドアは家に掛かった魔法のお陰で、いつの間にか綺麗サッパリ元通りだ。 「ゲッ!アイツたまーに怒るとウルセーんだよなー!勘弁しろってー!」 「じゃ、イジワルしてないでそろそろ戻してあげればー?てゆーかアタシ眠くなったから、もう寝るわ。おやすみー」 そう言って、ダイヤモンドは一人寝室へ消えていった。 「えー。カワイーから戻さなくてもよくねー?」 スマートは悪びれた様子も無い。 「ざっけんな!!」 泉がまた尻尾を逆立てて言う。 そのうち「フーッ!!」という声が聞こえてきそうだ。 「まっ、オレぁ別にいーけどよー。でもマジでいーのかぁ?」 「…どーいうコトっすか?」 含みのある言い方が気になった花井は、スマートに訊ねる。 「あー、予防線っつーかな。オマエらを守る魔法っつーか…ま、そんなトコだ。…オマエら、ナイトメアに話し掛けられたんだろ」 「!?は、い…」 スマートにはまだ説明していない事柄を指摘され、花井は警戒する。 自分が何故こんなに警戒しているのか、理由は花井自身解らないのだが。 「あー、んな警戒すんなってー。俺様に知らねーコトなんかねーの。ナイトメアに関しては特にな」 「なっ、何でですか!?」 今度は栄口が身を乗り出して問う。 ─もしかしたら何か情報が貰えるかもしれない。 そんな淡い期待を胸に抱きながら。 「だーってオレ、二百年前からナイトメアとずーっと友達だしー。」 「「ええええええええ!?」」 「「はあああああああ!?」」 「マジでーっ!?スッゲー!!」 「オマエもうそれ人間じゃねーよ!!」 「スマート!僕は聞いていないぞそんなこと!!」 複数の声が混じり、誰が発したのかわからない絶叫が室内に轟く。 どうやらその中にはアランの声も混じっていたらしい。 水谷に至っては叫んだ後、「アンタ何歳なんすか!?」と訊ねずにはいられなかった。 「たまーにケンカしてちょーっと殺し合いみてーなのしたコトもあったけどなー!今となっちゃあイイ思い出よ!」 スマートは水谷の質問を軽くスルーし、「はっはっはー」と楽しそうに笑って言う。 笑い方とは裏腹に、科白の内容は殺伐として洒落になっていないのだが。 …けれど、それが冗談では無いという事も西浦ーぜたちには解っていた。 一頻り笑い終えたスマートの表情が、一瞬にして真摯なものに変わったからだ。 「…ま、何にしてもアイツに関わるとロクなコトねーぜー?」 「ンなコト言われても…オレらが元の世界に帰るにはナイトメアの言う通りコアを壊すしか…」 「…は?……言う通り…?……ああ、コイツら…まだ……しか…」 スマートがポツリと小さく呟く。 西浦ーぜたちには聞こえない様な、小さな小さな声で。 「………え?」 所々しか聞き取れなかったものの、声をキャッチした花井が聞き返す。 「何でもねー、気にすんな! …でもま!俺様はやさしーからな!いくつか教えといてやんよ。 …いーか?よく聞いとけ。 全てを壊すのは簡単だ。 …だがな。全部壊しちまったら、二度と元通りにはならねぇ。 その時点で源になってたモンが変わっちまってるからな。 新しく同じモノを造り上げるなんてこたあ不可能だ。…何事もな」 「なにソレ!?どーいうイミ!?」 田島は「ワケわかんねー」と言いながら、頭を抱えて問う。 「わかんなけりゃいい。気にすんなって!……いつかイヤでもわかんだろ」 そう言ってスマートは何か考え込みながら煙管を取り出して思いっきり吸い込み、目を細めてふーっと煙を吐き出した。 煙はユラユラと宙に上り、先に発生したものから順にその姿を消していく。 まるで、何かを暗示させるかの様に、ユラユラと────。 To be continued... あとがき(仝ω仝) 「×××××」はご想像にお任せしますm(_ _)m 泉をご想像の上、当て嵌めてください←え) シリアスどこいった!!(;´д`) …今回はシリアス一歩手前で…す。 ていうか暫くシリアス一歩手前です←なんですと) でも私がギャグ体質なんでシリアスに見えないかも…しれなくもないです/(^o^)\← ※ブラウザバックでお戻りください Text-Long-Menu/TOP |