企画小説
愛ゆえの嫉妬だから*
ねぇ月…
俺を見て。
俺だけが必要でしょ?
なんでアイツといるの。
なんでアイツ…――
健太と笑って話すの。
月の手を強く握ってその場から逃げるように走った。
「いたい、痛いよ陽っ…!」
走りながら月の泣きそうな声を聞いた俺は、月を連れて誰もいない教室に飛び込んだ。
「つきっ…俺だけを見てよ」
月の目を見て言えなくて、埃で少し白くなった床を睨んだ。
震えた声。
すっごいダサい。
でも今は心も体も、自分の事しか考えてない。
ああほんとダサいよ俺。
「…よう」
空気が動いたような気配の後に、月が俺の頭に掌を置いて撫でた。
月の掌の温もりが伝わってきて無性に泣きたくなった。
でも俺は泣くなんてしないで、健太に触ったその掌が少し憎くて。
月を床に強く押し倒して口付けた。
キスなんて甘いものじゃなくて乱暴で無茶苦茶なそれ。
手は月のズボンを素早く下げる。
殆ど無意識のうちにシャツの前も左右に開いた。
ボタンが飛んだかもしれない。
とにかく今は、月が自分のものだって証明が欲しかった。
勿論月も受け入れてくれると思って顔を見ると、目から涙を零してそこには恐怖を確かに宿していた。
そんな月を見るのは始めてだった。
というより、月がこんな俺を見るのが始めてだったんだ。
「あっ、陽いや…っ、やだ、やだぁ!」
首筋にきつく吸い付くと俺の印が浮く。
必死に拒絶する月の両手を頭の上で一束にして、胸に唇を滑らせる。
尖端の粒を舌で甘噛みすると反らせて反応するのに、月には快楽なんて表情は見えない。
恐怖
執着心を剥き出しにして自分を組み敷く俺に対する恐怖だけ。
「くそ…ッ、月、つき!」
「あ、や…ぁッ、痛い…!!陽、いやッ、嫌だよ…っ!」
「……ッ!」
慣らしてもいない蕾に埋まっていく俺自身。
悲鳴をあげるそこを無理矢理奥まで突き上げると、月は目を見開いて俺にしがみついてきた。
「うぁあっ…、いた、い…ッやだ…っあ!」
「お前はあいつも…ッ、こうやって受け入れた…?」
「っあ、なんのこと…っ!?ぁあっ、や、陽やめ…っ…、ぁあん…ッ」
俺は月を犯しながらも頭はどこか冷静だった。
健太はお前が好きなのに、手が早いアイツが抱かないはずがないじゃないか。
いつも簡単に俺に体を開くくせに…。
「陽、ごめ…っごめんなさい…!オレが悪いんならッ、ぁんっ、なんでもする…っから」
「ック…」
放った白濁を最後の一滴まで出し切るように、腰を2・3度打ち付ける。
その度に月は腰をくねらせた。
「あ…、…ぁあ…陽……、はぁっあ、」
腕の中で背中を震わせる月に、思考が鮮明になってゆく。
俺は…
よりにもよって、大事な月になんて酷い事をしたんだ…。
「月…ごめん……っ」
ギュッと強く抱きしめると、月は首を緩く振った。
その首筋には朱い鬱血の痕が散っている。
「不安だった…?オレ、ごめんね…陽を不安にさせちゃったんだ…」
「ちがう…っ、俺…月が好きすぎて、もうどうすればいいのか分かんない…自分が分かんないよ」
ため息をついた俺の唇に、月の人差し指が宛てがわれる。
月は…柔らかく笑ってた。
「じゃあもっともっと…オレを愛して。自分から離れるな、って怒ってよ」
「怒ってないの…?」
「うるさい。そりゃあんな無理矢理されるのは初めてだし…ヤだったに決まってんじゃん、ばか陽!痛かったし…っ…!」
う…ッ……。
困った顔をしたら月はいつもの表情に戻った。
そんな月の顔を見ると自然と零れる気持ち。
「つき…好きだよ。本当に好き。」
「もっと」
額にキスを落とす。
「月大好き」
「もっと…!」
次に鼻の頭に唇を移動させる。
「ずっと愛してる…」
「…っん……」
柔らかい唇を自分のそれで啄んで、囁くと月が瞳を揺らした。
「…おれも、大好き」
「あぁ…月。どーしよ…今超幸せなんだけど」
「うん…っ。もう…陽がそんな事言うからオレ涙出てきた…。ほんと陽は大ばかだよ…」
ぐしぐしと両手で目を擦る月は、まだ子供みたいで。
でもどこか俺よりも大人で…。
これからも一緒にもっと大人になりたいと思ったのは、きっと俺だけじゃない―――
「ずっとそばにいて下さい」
end
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