[携帯モード] [URL送信]

モノクロツインズ
熱さと冷たさのあいだ

「う〜〜っ…、さむい…」

「そう?やっぱり寒がりだな、月」

隣で自分の身体を寒さから守るように腕で抱く月に、苦笑いの俺。

毎年冬になる前に既にマフラーを巻く月は、今年も例外でなく。

白黒の縞模様のマフラーを首にぐるぐる巻きにしている。


「陽こそ毎年毎年、そんな薄着で寒くないの?」

「…これ薄着に見える?」


そう言って俺は、自分の今の服装を見下ろした。
1番上には厚いブレザーを着て、その下はベスト。
もう一つその下にもカッターシャツを着ている。

10月にこれは決して薄着などというものではないはずだ。

「月の格好が暑すぎるんだよ。俺から見たら、それは着すぎだね」


え〜ってびっくりしてる月のブレザーをめくってみた。
その中はもこもこに膨らんでいたから、今日も絶対四枚くらいは長袖を着込んでいるんだろう。

「ぎゃっ、寒い!」

「色気ないなあ」

「そんなのいらないもんっ!」

ちょっぴり頬を染めた月は、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

そして一人速足で学校へと急ぐ。


「もう、うそだってば。月色っぽいっていつも俺言ってんじゃん」

「だーかーら!そんなの余計なお世話なんだよ!」

「…意地っぱり」


俺がボソッと漏らせた言葉に気付いて、唇を尖らせた月が振り向く。

「うるさいっ、暑がり!」


意味の分からない怒り方を時々する月だけど、今日は特に理解不能だ。

「ほらおいで月。あっためてあげるから」

両手を伸ばしてやると近付いてくるあたりがまだまだ可愛い。


「でもここ道だよ、」

「うん。だからこっち行こ」


学校近くの公園に寄って、砂場に座らせる。
月の正面に向き合うように俺も座って、腕を引き寄せた。

ぽて、と胸に冷えた頭が乗っかって、俺は月の背中に腕を回した。

「ん、陽、ちょっと恥ずかしいよ…」

「だれも見てないよ?」

月の頭に顎を乗せて、鼻から息を吐いた。
それが猫耳を掠ったのかぴくぴくとくすぐったそうに動く。


「陽……あ、ありがと」

「んーこちらこそ」

「?」


顔を上げて首を傾げた月の、薄い唇に自分のそれを押し当てて。

何度か啄んでからぺろ、と舐めてやった。


「…うわ、ぬるい」


俺が、舌で唇を少し舐めるのを見てから月は目を見開いた。

反応が遅れていたみたいで、その後にボボッと顔が真っ赤に染まる。


「にゃっ、にゃにすんだ…ッ」

「あれれ、焦ってる?」


ちゅ、


もう一度笑ってキスしてみると、今度の月の唇はすごく熱っぽかった。

「やば、興奮してきた」

「うぎゃっ、や、やだ、待っ…」

「待たないっ」


両手の平を掴んで押してやると、月は重力に従って簡単に砂場に倒れた。

じゃり、と砂の音がする。



近くで学校のチャイムが響いているのを耳に入れながらも、俺は月の唇から離れられない。


月の唇の熱

それが外気にさらされて冷たさを含むから、中途半端にぬるくなっていて。


寒がりでも、決して暑がりでもない俺にはこれが調度いい温度みたいだ。

今度月に教えてやろう。


end




あきゅろす。
無料HPエムペ!