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モノクロツインズ
双子と健太

俺、斎藤 健太は今大変な状況に陥っている

そりゃもう地球が真っ二つに割れたんじゃないかってぐらいの大変さだ

それもこれも、幼稚園時代から現在も片思い中の、月の一言から始まった…―――



「健くーん」

クラスの仲間と喋っていると、艶っぽい声が廊下から俺を呼んでいるのに気が付いた

見なくても分かる
…月だ

そう理解した途端に心臓がドクンと大きく跳ねた
体温が全部顔に集まってるんじゃないかと思うぐらい顔が熱い

何故かって?理由は一つ

月の事が好きだからだ

昔から好きで好きで、我慢出来ないくらい大好きだった
それは勿論今も変わらない

自分で言うのもなんだが、俺は顔の良い男だ
煙草や酒は当たり前だし、女も男も俺の顔だけ見て寄ってくるから、相手に飽きて気が済むだけ抱いた

それは月に対する情欲を発散する為だけの行為だと俺はずっと思っていた
だが最近、月自身のあの細い身体をこの腕で抱けたらどれだけいいだろう…
そう思うようになっていた

いつ月を抱けるだろうと心待ちにしている時…

「月、俺が呼んであげる。
おい…早く出てこいよクソ」

こいつ
月に似て似つかぬ双子の兄、陽の存在があった事を忘れていたのだ

こいつは俺の月への想いを知ってか知らずか、俺が傍にいる時に月にいちゃつく
最悪な気分だ

「陽、そんな事言っちゃ駄目。あ、健くんごめんね、」

「いや…別に、うん…」

目の前に月がいると思うだけで真っ赤になってこのザマだ
クソッ…
クラスの奴がジロジロ見てやがる

「月ぃ、早く言ってもう行こー」

こっちをちらりと見て口の端を吊り上げたのはまだ見逃してやる
だが月に後ろから腕回して、腰に当ててるのは許せねぇ
しかも首筋に顔を埋めて

「まだ待ってて陽。でね、健くん、今日の放課後空いてる?」

…今のは俺の空耳か…?
月が俺を見上げて放課後空いてる?なんて聞いてきた

「月が聞いてるんだぞ…?早く返事しろよ」

「うっせェ。 あぁーと、めちゃめちゃ空いてる…!超暇!!」

陽を睨んでから月にどもりながらも答えた
カッコわりィ…

「そっかよかった!屋上でさ、ひなたぼっこしない?今日暖かいから気持ちいいよ」

…これも空耳か…?
「ひなたぼっこ」とか可愛すぎるだろ…

「あ…ひなたぼっこ嫌いだった?」

「っは!!? いや、好き!!一日中しててもいいくらいに…!!」

シーンと静まり返る教室
早口の俺に月はにこやかに言った

「じゃ、終わったら屋上でね」




そして今に至る
陽はいない
ジュースの買い出しに負けたから学校外まで出て行った

月は…
熟睡して俺の肩にもたれて…

「っだぁぁあああああ…!!」

俺の理性よ…!
今だけでいいから保っていてくれ!!

「…ぅ、ん……っ…」

でかい声出したからか、月がもぞりと動いて悩ましげに声を漏らす
動いたせいで、月は俺の肩から胸にずれてしまった

「う…月、」

「やぁ…ん、ねむい…」

そんな事を言いながら胸に擦り寄ってきた
これは本格的にやばいだろ
今だけ、陽が早く戻ってきてくれと願った

と、思いつつも

「…ちょっとだけなら、いいか…」

ほんとに少しだからな…!

俺は自分に言い聞かせて、月の肩を抱き寄せた

や…柔らけー…

なんだこれ
女子みたいな柔らかさじゃないけど、男子高校生の体格からは程遠い

MAXに緊張してるからすごい不格好な抱き方だけど…
すごい幸せだ

好きな奴をこうするだけでこんなに満たされた気持ちになるなんて、今まで知らなかった

「ふふ…陽…、くすぐった…い」

…うん
あいつの夢見てたって構わないさ
今月を胸に抱いてるのは俺だ

もう少しこのままでも大丈夫かなー、なんて思っていたが、神サマはそこまで俺に優しくないらしい

あいつ、陽が屋上の扉を思いきり開けて戻ってきたのだ
腕には数本のジュースの缶
顔には恐ろしく冷たい笑顔が張り付いていた

「で?お前は何、人のモンに手ェ出してんの?」

こえぇぇ…!
普段は月と一緒にいるから本性隠してるみたいだが今は殺意むき出しだ

「ぅんん……あれ、陽?おかえりー」

目を擦りながら月が起き上がった
寝起きでちょっと寝癖付いててかわい…
ってそうじゃなくて…!

「月おいで。ケダモノの傍にいたら食われるよ」

「ケダモノ?って、のわぁっ!」

あんたこそ何してんだ人の目の前で堂々と
キス…
キス……?

「んっ、はぁ…っ、陽っ!」

「ふふん。気持ちヨかったくせに」

うっわー…
もう立ち上がれねぇかも…

甘ーい雰囲気出してる双子
しかも陽はしてやったり、みたいな顔をこっちに向けた
月は俯いて顔真っ赤にしてる

誰が見ても分かる状況だ

「さってとぉ、体力回復した事だし、ジュース飲もー」

「あ、っと健くん。 ジ、ジュース飲も?何がいい?」

まだ真っ赤な顔を隠しながら月が俺に振り向く
目うるうるしてるし…
よっぽど恥ずかしかったんだな

適当に月から缶を受け取って、二人の様子を観察
楽しそうに話していて、月は時々俺に話をふったりしていたけどやっぱり恥ずかしそうだった

あぁ月…
慌ててる姿もかわいー…

「健太、月の事見つめないでくれる?俺のだから」

「ちょっ、や…っ、陽!」

俺のだから、と言いながら月の頭を抱えてまたキスしやがった!

「だめってば!健くん…いるのに…恥ずかしい」

恥ずかしいけど嬉しいんだな、やっぱり…
双子で恋愛とか許さねぇぞ!

俺は絶対諦めないからな、月!!
陽よりも愛してやるから覚悟しとけ!


……本人と喋るのはまだ緊張するけど





end



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