出演者決定
その日は、六年の合同実習だった。
だが、大して難しい内容ではない。
とある城に忍び込み、兵の数、食料や火薬の貯蔵量などを調べるだけ。
まだ戦は始まっておらず、始まるかもしれないという噂だけが先走りしている状態で、
城の警備もさほど厳しくはなかった。
もちろん侮って油断をするつもりは毛頭ないが、失敗する可能性などは考えられない。
そう思うほどに、障害の少ない忍務だったのだ。
役割は伊作と文次郎が潜入と調査、長次と私が援護と陽動となったが、私の出番はないだろうと思っていた。
だが、まさかの事態が発生した。
伊作と文次郎の侵入が見つかったという合図が上がる。
それをきっかけに私は攪乱の為の焙烙火矢を投げ、二人の撤退方向とは反対に走り出した。
戦もしていない、準備をしているかどうかも分からない城からの追っ手はすぐに諦めるはずが、なかなかどうしてやけにしつこい。
しかも囲い込まれるように道を阻まれ、気付けば私は仲間との集合場所からかなり離れた場所まで来てしまっていた。
だが、ここまで来てようやく追っ手を撒く事が出来たらしい。
あれから時間も経っているし、伊作と文次郎は既に脱出しているだろう。
「だが、合流するのに時間がかかってしまうな…」
独りごちて空を見上げると、東の空がうっすらと明るくなってきているが。
まぁ、今さら焦る必要もないだろう。
追っ手の残党を警戒しつつ、歩みを進めようと思った時に視界の隅で何かが光った。
常ならば、気には留めていなかった。
忍務中に駆られるような好奇心など、私は持ち合わせてはいないのだから。
だが、何故か。
その時の私は当たり前のように、その光の正体を探した。
生い茂る草を手でかき分けると、現れたのは苔むした祠。
もう何年も、人が触れたような形跡はないが…。
光ったのは、これか?
私は無意識に、それに手を伸ばし…
そこで唐突に、意識を失ったのだった。
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