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笑い合えたら




「あちー……」

部屋に帰ってくるなり山ちゃんはズカズカと一直線に歩いていったかと思うと窓を閉めて、クーラーのスイッチを入れた。
オレの右手にはコンビニの袋。
中から取り出したのはアイスキャンディーひとつ。


「おかしーよなー、何しに言ったんだか」

シャツの胸元をぱたぱたやりながらおかしそうに山ちゃんが笑った。
オレたちは何か冷たいものを調達しにいこうとコンビニへ向かった。
…にも関わらず二人とも財布を持ってきてないことに店で気づき、二人してポケットを探るとチャラチャラ鳴る小銭の音。


合わせて108円。


買えたのはアイスキャンディーのバー一本。
最近そうそうお目にかからない真ん中で二つに割れるタイプのやつ。


「一応買えたじゃん」
「まーねー。しかもお釣りも出たし?」


ポケットから一円玉を取り出しながら山ちゃんがまたおかしそうに笑った。


「キゲンいいじゃん?」
「やー、なんかおかしくってさー」


思い出すかのようにくつくつと笑う山ちゃんを尻目にオレはアイスの袋を破って中身を取り出す。
店で気づいた時はオレも顔を見合わせてアホじゃねえのと笑ったもんだが、山ちゃんは帰り道もずっとこんな調子だった。
きっと、山ちゃんのツボだったんだろう。

アイスキャンディーを二つに割ると、一つを山ちゃんに渡した。


「あいよ」
「おー、さんきゅー」


上機嫌に受け取った後すぐに口に運ばれるアイスキャンディー。
味はラムネ。


「んー……!つめて」
「そらアイスですから」


そう言いながらオレは幸せそうに顔を綻ばせる山ちゃんに顔を近づけて、軽く唇を合わせる。
なんとなく、キスしたいと思った。
衝動的なものだ。
顔を離すと山ちゃんは少しキョトンとしていた。


「冷てえな…あめぇし」
「……アイスですから」


山ちゃんの返答に少し笑って、オレは自分のアイスキャンディーにかぶりついた。
冷たい。
冷たくて、甘い。
甘いものは苦手だけどたまにすごく美味く感じることもあった。

ふと目の前に山ちゃんの顔。
冷たくなった唇に、同じく冷たくなった唇が、重ねられた。


「おんなじじゃん」


唇はすぐに離されて、隣を見ると悪戯が成功した時の子供のような表情がそこにあった。
今日は、本当に、機嫌がいいらしい。


(あー……もっとしてえなあ)


取り敢えずオレは手に持ったアイスキャンディーを溶けないうちに全て食べてしまおうと思った。
お楽しみは、それから。










(失敗も二人で笑い飛ばして生きていけるならなんて幸せ)





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あきゅろす。
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