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Novel
ひと休み‐吹雪と染岡の場合‐
ピンポーン

ドアを開けるとサッカーボールを持った吹雪が立っていた。
「染岡くーん、一緒に風になろーよー」
「・・・気軽に使うなよなそのセリフ。わりぃ。テストが近いからさすがに勉強しねぇといけねぇし、また今度な」
「えぇー。染岡くんがテスト勉強頑張ってるって聞いたから、染岡くんに息抜きしてもらおうと思ってきたのに・・・・・」
「うっ」
吹雪は目を潤ませてこちらを上目づかいで見つめている。その様子はまさに散歩を期待する犬のようであった。
「ま、まぁ、せっかく来てくれたんだし上がれよ。さすがにサッカーは出来ないけど茶くらいは出すぜ」
「うんっ」



「おじゃましまーす。・・・ここが染岡くんの部屋かぁ」
「あんまりじろじろ見るんじゃねーよ」
「うん。ボクのことは気にしなくて大丈夫だよ」
何が大丈夫なのか。気にするなと言いながらも吹雪はきょろきょろと俺の部屋を興味津々で見ている。そして遂にはベッドの下まで覗き始めた。
「・・・おい、何してんだ」
「何ってそりゃあ、男の子の部屋に入ってやることって言ったら1つしかないよ染岡くん」
そういうことか。わざわざ俺の家まで来て何をやってるんだコイツは。
「お前は俺の母親か彼女か?残念ながらお前が疑ってるよーなもんはねーよ」
「ちぇっ。染岡くんの性癖を知るチャンスだと思ったのにな」
「それは残念だったな」
わざと他人事のように。そして精一杯の嫌味を込めて言う。しかし吹雪は俺の嫌味などどこ吹く風であった。
「まぁ、こんなことしなくても近いうちに分かることだからいいんだけどね。それに分からなくてもボクがいつでも開発できるしねっ」
「・・・・・・」
吹雪が何を言っているのかすぐには分からなかった。とんでもない爆弾発言を聞いたような気がするが、あまりにも現実離れしていたから俺は何も聞かなかったことにした。
「あ、それと染岡くん。ボクは染岡くんのお母さんでも彼女でもないからね?」
「わぁーってるよ。例えだよ例え」
「だってボクは染岡くんの彼氏だもの」
「ばっ何を言い出してんだお前はっ」
今度は反射的に反応してしまい、なかったことにできなかった。自分でもはっきりとわかるほど顔が熱かった。面と向かって言葉にされると逃げ道がない。吹雪は俺の反応を見て満足そうに言葉を続ける。
「ほらね。ボクの言ってることは正しいでしょ?染岡くんってばこんなに素直で可愛いんだもの」
「これはお前が変なこと言うからだろ!!」
そんなやり取りをしながら、俺は吹雪と会ったことで肩に入っていた力が抜けたような気がしていた。
「そんな可愛い染岡くんのもっと可愛い姿をたくさん見たいな。さぁ染岡くん、アルバム見せてっ」
「ったく。ホントお前は何しに来たんだよ」
目をキラキラと輝かせながら催促している吹雪に向かって言う。結局俺はいつものように吹雪のペースに振り回されて、この日は勉強どころではなくなってしまった。



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