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Novel
君の方から
学校の廊下を、幸村がきょろきょろと見回しながら歩いていた。
「あ、柳生。丁度良いところに居た」
「おや?幸村君ではありませんか。どうかなさったのですか?」
「うん。実は今、仁王を探していてさ」
「仁王君を?彼がどうかしたのですか」
「いや、仁王が何かしたわけではなくて、聞きたいことがあるんだ」
「わざわざ仁王君に、ですか。それはまた何故です?」
「それはね。仁王なら催淫…じゃなかった、催眠術の方法を知ってるんじゃないかと思ってさ」
「・・・・・あぁ。そういうことでしたか。仁王君ならこの時間は校舎裏の木陰で涼んでいるはずですよ」
「ありがとう、助かったよ。じゃあまた後でね」
「ええ。ご健闘を祈っていますよ」



「あ、いた。仁王〜」
「ん?」
「ちょっと君に聞きたいことがあるんだ」
「部長自ら質問とは、何ぜよ?」
「それがね、催淫・・・また間違った。催眠術の方法を知っていたら教えてほしいんだ」
「ほぉ」
「お願いできるかな」
「俺が部長の頼みを断れるはずがないからのぉ」
「ありがとう。で、早速だけどどうすればいいの?」
「まぁ、そう慌てなさんな。幸村よ、催眠術よりも簡単で確実な方法を試してみんか?」
そう言うと、仁王はミネラルウォーターの入ったペットボトルを取り出した。
「それは?」
「まぁ、言ってしまえば媚薬入りの水じゃ」
「へぇ。じゃあこの水を飲ませれば良いんだね」
「あぁ、でも効力はあまり続かんから時間との勝負になるがの」
「それなら大丈夫。恩に着るよ」
「神の子の恩とは恐ろしいの。早く行きんしゃい」



「さっなだー」
「む。幸村か」
機嫌のいい幸村が部室に入ってきた。
「相変わらず早いね。みんなは?」
「まだだ。まったくたるんどる」
部員が来ないのは当たり前だった。幸村が事前に人払いをしておいたのだから。
「ふふっ。みんな約束を守ってくれているみたいだね」
上出来、と心の中でつぶやく。
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何でもないよ。それより真田、君にプレゼントだよ」
そう言って仁王にもらったミネラルウォーターを真田に手渡す。
「わざわざすまないな。助かる」
「この時期の水分補給は特に重要だからね。それに真田は人より汗をかく量が多いからね」
真田がミネラルウォーターを飲むのを確認してから声をかける。
「じゃあそろそろみんなも来るだろうし、コートに移動しようか」
「そうだな」



「暑いな」
「そうかな?今日は涼しい方だと思うけど」
媚薬の効果が出始めているのか、真田はいつも以上に暑さで汗をかいていた。幸村は心の中でガッツポーズをする。
「む。おれもまだまだだな」
「ふふっ 真田、顔が赤いよ?倒れたら困るから、1度部室に戻って体を冷やしてこよう」
「幸村、この程度大したことではな・・・・・い?」
真田が少しよろめいた。自分でも予想外の出来事だったのか、驚きを隠せないでいる。
「ほらね。行くよ」
「・・・分かった」
よほどショックだったのか、今度は素直に聞き入れた。
「じゃあ柳、後は頼んだよ」
「あぁ」
柳はとてもうれしそうな幸村と、落ち込んだ様子の真田を、対照的な様子で同じ場所に向かう2人の背中を見送った。


「すごい汗。大丈夫かい?」
幸村は喜びが表に出ないようにしながら真田に声をかける。
「ああ。このくらいの熱なら少し休めばすぐに引くだろう」
「ふぅん。ねぇ真田、俺が最も効率的な冷やし方を教えてあげようか」
本当はもっと媚薬の効力を見てみたかった。真田の方から言い出すのを待っているはずだったが。
「?だから体を冷やすのが1番だと」
「俺にキスして」
媚薬の効果を高めるように、わざと耳元でささやく。
「なっ!?」
「本当は気づいているんだろ?自分自身が今何をしたいとを持っているかぐらい」
「たわけっ。俺がそのような真似をできるわけがないだろう!」
「今の言葉は傷ついたなぁ。じゃあ俺の勘は外れたわけだ」
「あ、いや、それは」
「じゃあしてくれるよね、キス。お互いにメリットしかないんだから」
「う、うむ」
媚薬の効果なのか、真田の判断力は低下しているようであった。キスなんてしたら余計に体が熱くなるに決まっているのに。けど頬を赤らめながらも素直に俺の言うことを聞いている真田はとてもかわいらしかった。この姿を見られただけでも媚薬を使ったかいがあったと幸村は思った。
「ちはーっ遅れましたー。って、ぅわ!」
遅刻のせいで事情を知らない赤也が部室へと入ってきてしまった。赤也は部室のドアを開けたままで固まっている。
「あーあ。せっかくイイところだったのにな」



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あきゅろす。
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