[携帯モード] [URL送信]

Novel
この手を君に
「うーさみぃ」
「染岡くんったらこの寒さにやられているようじゃ北海道では生きていけないよっ」
2人は合宿所での忘年会に向けて、食材の買い出しに来ていた。さすがに人数が多い上に食べ盛りのため、マネージャーたちだけでは到底調達できる量ではなかったのである。
染岡はお前夏にマフラーしてたじゃねーか、という言葉を飲み込む。首をすくめポケットに両手を入れて寒さをしのいでいた。
「さみぃもんはさみぃいんだよ。それにここは東京だ、とっとと買い出し済ませようぜ」
「えぇっ!染岡君はいずれ北海道に移り住むんだよ?そんなことじゃあ先が思いやられるよ」
「そんな話どっから出てきたんだよ。それにそんな先の話はまだわかんねーよ」
肩を落としていた吹雪が急に勢いづく。こちらを見る目がキラキラしている。
「分かった!僕が染岡君を誘惑し続ければいいってことだねっ」
「何でそーなるんだよ、全く」



買い出しを終えての帰り道。
「ずいぶん買ったな。さすがに食いきれんのかコレ」
「大丈夫だよ、みんな食べ盛りだもの」
「お前は母親かよ」
「そんなことより染岡くん、荷物半分持つよ」
重たいでしょ?と吹雪が俺の顔を覗き込んでくる。
「あぁ?別にいいよこれくらい」
「僕だって男なんだからそれ位持てるよ。それに僕が半分持たないと・・・・・」
「? 持たないと?」
「染岡くんの両手が塞がったままだと手をつなげないんだもの」
「なっ・・・あっぶねっ」
予想外の言葉に両手の荷物をぶちまけそうになった。
「ほら両手に荷物持ってるのも危ないし。ね?」
「今のは誰のせいだっつーの。でもまぁ、ありがとな」
そう言って荷物を半分渡す。空いた左手を吹雪が握ってくる。あんまりにも吹雪が嬉しそうにするから。自然とその手を握り返す。そのまま合宿所に着くまでの間、2人で手をつないで歩いた。



前ページに戻る



あきゅろす。
無料HPエムペ!