Novel ひと休み 「そういえば円堂、今度の期末テストの勉強してるのか?」 「え?あー全然」 円堂がごまかすように苦笑した。 「おいおい、良いのか?もし赤点だったら夏休みは補習だぞ?」 「へ?」 「赤点の人は夏休みナシってことさ。つまり赤点取ったら夏休み中は殆ど練習に参加できないってこと」 「えぇ!?うそだろぉぉぉ」 「なぁ、助けてくれよ鬼道〜」 「・・・すまない円堂。今回は壁山達の勉強を手伝うことになっているんだ」 「うー。豪炎寺ぃ〜」 「・・・すまない」 2人は風丸からの無言の圧力を感じていた。だから「手伝ってやる」とは言えなかった。 「そんなぁ。風丸ーお前だけが頼りだぁ」 円堂が涙目でこちらを見ていた。サッカーが出来ないというのが相当なダメージになっているようだった。 「そう言われてもな。俺は別にお前の便利屋じゃないんだぞ?」 円堂の困り顔をもう少し見たくて、つい意地悪を言ってしまった。素直じゃないな、と内心苦笑する。本当は待ちに待っていたことばだったのに。 「そんな冷たいこと言わずに頼むよ。夏休み中もお前とサッカーがしたいんだよっ」 「っ!! ホント、円堂には勝てないな。分かった。手伝うよ」 「やったー!ありがとな、風丸大好きだぜ!これで夏休み中も思いっきりサッカーが出来るなっ」 「・・・まだそうと決まった訳じゃないだろう?ほら、時間がないんだから今日から早速やるぞ」 「うっ。しょうがないか」 「うーーん。分かんねぇ!!」 「もうちょっと真面目にやれよ円堂。まだ始めたばかりだぞ?」 円堂の部屋で勉強することになったものの、一向に進む気配がなかった。 「なぁ、ちょっと休憩しようぜ」 「ふぅ。じゃあ少しだけだぞ」 すると円堂が膝に頭を乗せてきた。俺は一瞬何が起こったのか理解が出来なかった。 「な・・・円堂!?」 「ん?いーだろ?休憩中だし。それに最近は全然風丸に触れなかったしさ」 本当に円堂という男は恥ずかしいセリフを堂々と言う。でも嬉しくないはずもなく、顔が赤くなってしまった。 「あははっ お前耳まで真っ赤になってるぜ?」 「まったく。誰のせいだと思ってるんだ。おかげで俺は全然休憩出来ないじゃないか」 ぼそっとつぶやく。 「まさか、風丸は俺と一緒に時間が少なくても平気だったのか?」 円堂が不安げに俺の顔をのぞき込む。円堂に見つめられると絶対に本音が口からこぼれてしまう。 「俺だって円堂に触れたかったに決まってるだろ。・・・だからもう少し休憩な」 「へへっ」 結局、勉強がはかどるはずもなく。勉強会にはならなかったが、2人にとっては有意義な時間となった。 前ページに戻る |