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Prisoner
28
十年前――――




「樹里…僕たちは
充分すぎるほど永い時間を生きた
君が生まれてから三千年近く…
ずっと一緒だった…しあわせだったよ」




「そして長い間考えた末、可愛い子供たちを授かったね」

「優姫と叶、そして枢も」







敵はすぐ目の前

「失ってしまったけれど、守れなかったけれど。愛しい子供たち……」


悠は目を細める。




「…ねぇ、樹里…
叶は幸せだったかな?
僕たちはあの娘を最後と決めたのに、優姫を産んでしまったことを許してくれるかな…
守れなかったことも………」
「悠……」


「今が潮時なのかもしれない。
君が優姫にしてあげたいと思っていたこと、今なら賛成できるよ
僕たちの力であの娘に別の未来を…」


叶には、できなかったけれど。


「…ええ…、悠…」




しばらく、互いに見つめ合って覚悟を確かめ合う2人。




「じゃ…先に行ってるね
枢には怒られちゃうかも……」
「どうだろう…
僕に似て素直じゃないからね」












「枢、優姫」
樹里が部屋に入る。


「優姫のこと、頼みます…」
凛と、枢に告げる。




「…すみません
李土のことは…僕が片付けなければならなかった」
「枢」


あなたは叶がいなくなってから、いつもそうだったわね
自分を責めて責めて、、笑わなくなってしまった。心から。




「…ありがとう…」


そしてごめんね




「優姫をずっとよろしくね」




扉が、閉まる…


「かなめ…おにいさま…!」







「優姫…あなたの吸血鬼の因子をすべて眠らせて、あなたをただの『人間』にするわ」


叶、本当はあたなにやってあげたかった……




「おかあさま、おにいさまが! 外にはこわいのがきてるのに」




私たちの子として生まれてきて、あなたは幸せだったかしら?




「この術式をやってしまうと、かわりにもう…そばにはいられないけど」


優姫、せめてあなただけは…




「お母様…あなたの役に立てて幸せよ」
「おかあ…さま…? 」




ぽた…


ぽたぽた




流れるのはいっそ鮮やかなほどの朱




「勝手に決めて恨まないでほしいけれど…、ああ…でも」


優姫、あなたは叶の分まで―――




「次に目覚めた時は何も覚えて―――――」




―――― 生 き て ……












「枢、お前がさがりなさい」




ふわ

悠は枢を後ろから抱き締める。




「我が子の背中に庇われるなんて、親の誇りを打ち砕かないでほしい…」
「…っ!?」
「叶ともね、枢のことをいろいろ話してたんだよ?」


自分が守ると言って地下に籠ってしまったあの娘は、一番に僕たちの心配をしていたから。




「それに、お前は叶が好きだったろう?」
「…っ違う…お父様…、悠…僕は……」


「大丈夫…全部わかっていっていて言ってるんだよ…」




お前が玖蘭の始祖だということも、言いたいことも、
叶を本気で愛していたことも、優姫を叶と―――…




ピシ


ピキン




ゆっくり、ゆっくり…壊れていく音がする




「…悠、今の剣で心臓も…!」

「…それでもお前はずっと、僕たちのかわいい子供に変わりはなかっただろう…?」


そして優姫と叶の兄だ。

それは、これからもずっと……
僕たちは、家族と変わりなくて











『この男(ひと)は私のっ…おにいさまなの……』


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