Prisoner 第28夜 これは戒めでもあった 過去の記憶 玖蘭叶 それが、私の両親 玖蘭悠と玖蘭樹里から貰った本当の名前。 幼い頃から、深い深い地の底で生活していた。 しかも、私の場合は特殊で、 半分隔離された状態だったのだ。幼い頃から。 そして、 知ってしまったのは、自分の所為で 両親と枢が危険な目にあっているということ。 地下で生活しているのは、自分への戒めでもあった。 私の所為で両親は、枢は幸せに暮らせないんだと、 なのに自分が幸せだと思うことを赦さないと、 自分の幸せのために家族を不幸にしてはならないと、 あの時、 あの人が言っていた言葉を忘れるな…、と 『……そう、君は幸せになっちゃいけないんだ』 『君は家族にとって疫病神なんだよ? 』 『なのに、一緒に居るつもりかい? 』 すべての、 崩壊の、 始まりだった。 だから、 逃げたんだ。 あの日―――― 「決めたんだ」 「え?」 聞き返す、枢。 「叶、何か言った?」 「んー? 明日もまた来てね?」 否、来ないでね 「…何もここにいなくてもいいんだよ?」 「私は死んでるの」 「ッ! そんなこと…」 「ねぇ、お兄様……私のこと忘れないでね? ずっと…、ずーっと!」 「……叶?」 「ばいばい」 それは、わたしの限界。 私は限界だった――――― 簡単に死ぬことをゆるされない、できない吸血鬼(私達)だったから。 逃げることを、 この世の何からも逃れることを、 私は選んだんだ。 「…もう、きっと逢うことはない。 でも、私が居なくなったことで幸せになって欲しい…」 でも、何て…我侭だろう 涙が、頬を、伝う… 「枢お兄様…… 願わくば、貴方が私のことを忘れませんように………。 願わくば、 私が、存在していたという証明を――…」 嗚呼… なんて私は、 弱いのだろうか。 [*前へ][次へ#] [戻る] |