[携帯モード] [URL送信]

屑+細+没
X頑張れデンバット
今日はデンバットが物凄い勢いで戻したからデンバット記念日。デンバットの胃が物を受け付けなくなってから久しい。すっかり痩せ細ってしまった背中をさする。誰もから愛され必要とされているデンバットがこんなに苦しんで良い訳がない。頑張れデンバット負けるなデンバット、みんな応援してるよ。

今日はデンバットの涙腺が決壊したからデンバット記念日。訓練の途中で突然涙が溢れて止まらなくなって、みんなにすまんごめんごめんなさいって謝り続けた。訓練から外されて一時間後に見に行った医務室で、まだしゃくり上げてはいたものの漸く泣き止んだデンバットは申し訳なさそうに俯いてた。気にしなくていい分かってる、申し訳なくて潰されそうなんだろう。気にしてないよ。だから気にせず、頑張ってくれデンバット。

今日はデンバットが静かに眠れたからデンバット記念日。半ば気絶に近い形で倒れたけれど、連日の寝不足のせいで真っ赤だった目は閉じられ、苦痛にもがき疲れた身体はやっと温もりの中に沈むことができた。良かったなデンバット、みんな心配してたんだよ。これで明日から元気になってくれるよな。明日からまた頑張れデンバット。

今日はデンバットが半殺しにされたからデンバット記念日。デンバットが単身乗り込んでくれたお陰で油断した敵を処刑できた。予想以上の成果だって隊長も感心してくれてたよ。か細い息を辛うじて吐いてるデンバットの半分以上潰れた身体は、担架に乗せられ運ばれて行った。メイデン様のお力なら元通り。何も心配しなくて良いから、今まで以上に頑張ろうデンバット。

**

臓物をぶちまけたみたいに紅く染まった部屋でデンバットが笑う。

「夢の中で先輩が俺を励ましてくれるんだ。頑張れ頑張れって。だから俺は頑張れる。頑張るよ」

先輩も友人も家族もみんなデンバットの励みになっている。誰も彼もデンバットに頑張れと言う。無数の手が彼の背を押し、彼に絡み付き重圧を掛ける。窶れた笑顔。痩けた頬。真っ黒な目の周り。
頑張れ。
頑張れデンバット。
前を向いて立ち上がって口角を吊り上げて文句一つ言わず太陽の下を走って行け。脚が縺れても這ってでも進め。

「……、」

何も言えない。俺には彼に掛けれる言葉が無い。俺程度じゃとても、とてもじゃない。

何て眩しいんだろう。
俺は自分の目が潰れないよう彼の姿から視線をずらす。こんなに頑張れる。デンバットはどこまでも真っ直ぐ生きている。文句一つ言わず敷かれた道を歩いてる。
赤色が視界の端々に滲む。デンバットは依然として笑みを浮かべ続けているのだろう。俺は彼に背を向け歩き出し、部屋を後にする。


「俺、どうしたら良いのかな…」

背後からぽつりと漏れた、答えなんて分かりきってる問い掛けが、いつまでも耳に残った。



泣き言なんてとても

[*前]

あきゅろす。
無料HPエムペ!