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屑+細+没
kなくしました
君が愛でるもの、僕は素敵だとは思わない。
だって君の眼球に映された其れを見てみろ、汚いったらありゃしない。

「君がだめにしてるんだよ」

そう言うと彼は悲しそうに困ったように笑った。
それがまた僕を苛々させる事、解ってるの。

「君の心はとっても嫌な舌触りがするんだろうね」
「たべてみますか」
「要らないよ」

君の感触なんて想像しただけで体を虫が這うようだ、ぞっとしない!
そう言って足元の石を蹴飛ばすと彼はですよねぇ、と言った。
その声がどうにも奥に沈み込んだので振り向けば、其処に彼は居なかった。

「え、」

息を呑んでから名を呼んでみたけれど響くばかりで答えがない。汗が頬を伝っていく。

「紫苑、くん」

いない。
ない。

「な、な、なんでなんでなな、で」

自然に走り出していた。何故だか知らないけど頭の中から彼の声がする。

『あなたも汚いんでしょうねぇ』

畜生。畜生。どういう意味だ、それ。
どこへ行った。
どこへ消えた。
コンクリートを蹴って温い大気を切って、灰色の海を渡る。

そうして目の前に、徐々に浮かび上がる輪郭。


「な、んなの」
「なにがですか」

何がとはなんだ、君今消えたじゃない!と叫べばまた笑顔を返される。

その笑顔を埋める白が――目に染みる。

「なんでそのまま居てくんないの」
「ぼくがだめにしてるんでしょう?」
「ば、ばか言うな」

僕は何も言えずに拳をぎゅっとした。

そこは病院だった。
君の目は両方ともすっかり無くなってしまっていた。

「どうして」
「汚してしまうので、」

これ以上あなたを汚したくなかったので。
包帯を穴が空く程見詰めたけど、その下は既に二つも穴が空いてしまっている。

「ばか」

もう何もないのだ。
奪ってしまった。
僕は只、妬んでいただけなのに。

尚笑ってみせる彼に、僕は、泣いた。



天の邪鬼の代償

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あきゅろす。
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