2011 涙は勝つまで 軽いピーッという音が体育館に響いた。途端に沸き上がる歓声と悲痛な嗚咽。 私は額から流れる汗を拭った。 負けてしまった。 あんなに頑張ったのに、というやるせない想いと出来ることはやったという達成感。 2つの想いに私の胸は苦しそうにバクバクと鼓動を重ねている。 「負け…ちゃ…っ!」 チームメイトの女の子が泣き崩れているのを横目に、私は体育館を出た。 「…準決勝だったのにな」 やっぱり悔しい。 比較的今日は活躍してたと思うし、頑張った方だった。 私がもう少し点を入れていたら変わっていたかも。違う人にパスを回せば…だなんて今更後悔が押し寄せてきた。なんだ、私だっさいな。 「名字?」 しゃがみこんでいた私の所に誰かが声をかけてきた。ああ、この声は水谷か。 「…大丈夫か?」 「うん、平気」 相変わらず優しい。まぁその優しさが今は辛いんだけど。 だって私は負けちゃったから。 あー…クラスのみんなで優勝掲げたのになぁ。 「男子バスケは勝ったよ」 「…っ!おめでとう。」 「ありがとう。」 そう言って水谷は私の横に腰を降ろした。 なんだよ、私行こうと思ってたのに行けなくなっちゃったじゃんか。 「次は決勝なんだ。たぶん10分後に召集かかる」 なんだ水谷たちも準決勝だったんだ。 自分の試合で頭がいっぱいで、そんなこと確認すらしてなかった。 「相手は…女子バスケが準決勝で負けたクラスなんだ。」 そう言った水谷は首からかけていた長めのスポーツタオルを外した。そしてするっと私の首にかけた。 え、これ何?どうすればいいの? 動揺する私を余所に、水谷は立ち上がって微笑んだ。 「名字は応援してて。俺、勝ってくるからさ!だから…一緒に1位獲ろう?」 涙は勝つまで (ピーッ。) (…っ!名字、1位だよ!) (うん、ありがとー!) [*前へ][次へ#] [戻る] |