榛名元希
熱の鎖
「あちぃ」
手をパタパタさせながらドアの入り口に立つ榛名の首筋には汗が浮き上がっている。
「…お疲れ」
休みの日でも練習を欠かさないとこを見ると、流石野球バカと言いたくなったけど言わない。
え、だってバカってとこに反応して怒るからね、こいつ。
「待たせて悪かったな」
「思ってないくせに」
まあな、とにこやかに言った榛名は本当に悪びれもなさそうで逆に毒気を抜かれた。
「でも、楽なんだよな」
「何の話?」
「お前」
相変わらず話の主旨が伝わらない。
榛名は国語を勉強し直した方が良いんじゃなかろうか。
「榛名、意味わかんない」
「お前、私と野球どっちが大切?とか聞かねーじゃん」
「私と野球どっちが大切なの」
「ばっか、棒読みやめろ」
だってそんな今更でしょ。
榛名にとって野球は大切で、でも私も大切なんでしょ。
こう言うと自意識過剰みたいだけど。
榛名にそう言ってやったらよくわかってるじゃん、と少しにやけた顔を向けられました。
熱の鎖
(言葉にしなくたって)
(伝わるものは)
(あるんだよ!)
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