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進撃の巨人
8話【――良い人!?】

「いくら何でも早すぎる!」
ろうそくの炎が薄暗い部屋をともす。全ての訓練が終わり、キースは一人の男と対峙していた。
「彼女の場合は特例が取られてしかるべきだ」
調査兵団団長である――エルヴィン・スミスと。
「立体機動も完璧に使いこなすのだろう?」
「完璧と言っても・・・・・・今日初めて使ったんだぞ!?にも関わらずいきなり――壁外調査など・・・・・・」
キースが声を荒げる理由、それは訓練途中のウィルを壁外調査に同行させるという事についてだった。

「巨人に遭遇した時に冷静な判断が出来るとも思えん」
苦い表情のキースとは対照的に、エルヴィンはあくまで冷静に口を開く。
「ウィルはもう既に巨人に遭遇している。弱点のうなじについても熟知していたようだ。それに・・・・・・格闘に関してはリヴァイが面倒を見ているようだしな」
エレンやアルミンの話を思い出しつつ、目の前に座るキースを見た。まだ何か言いたげなキースだが、口を開こうとはしない。
「出発は今月末だ。それまでに最低限の知識と技術を身につけさせてくれ」
話は以上だと言い残し、エルヴィンは部屋を出て行った。

一人残されたキースは、深くため息をついた。
――知識、技術の前に・・・・・・協調性が必要だ。
残された大きな課題に頭を抱えながら、今後の訓練について考えるのだった。









訓練も終わり、ウィルは自室で腹筋を行っていた。
「67、68・・・・・・」
小さい声で数を数えつつ、今日の訓練内容を思い出す。
――立体機動はアンカーを外すことを忘れないこと・・・・・・。
当たり前の事を何度も唱えていると、回数を忘れてしまった。

「おいウィル居るか?」
軽くため息をつき大きく伸びをしていると、扉の方からエレンの声が聞こえた。
「いるよ」
振り向くと、何やら荷物を抱えたエレンが、部屋に入って来た。
「これ、届けるように言われたから持ってきた」
そう言って訓練兵団のマークがプリントされたジャケットを大量に手渡す。
「ありがとう」
何枚か落としつつもしっかりと持ち直すと、ウィルはエレンに頭を下げた。

「お前兵長に格闘訓練してもらってるんだろ?」
「え・・・・・・うん」
瞳を輝かせながら聞いてくるエレンに、ウィルは若干驚きながら頷いた。
「兵長は厳しい所もあるけど・・・・・・良い人だからな。良かったな!」
―――良い人!?
その単語に内心首を振るが、信頼しているエレンの言葉を否定する事も出来ず、引きつった笑みを返した。
「俺が教えられる事は少ねぇけどさ・・・・・・分からない事があったら聞けよ」
力強いエレンの言葉に、ウィルは安心したように頷いた。
「うん」



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