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梟の唄
上へ参りまーす


エレベーターに乗り込むと、志乃は迷わず最上階のボタンを押した。

本来なら専用のカードキーを読み込ませないと動かない仕組みになっているのだが、先ほどメールをした時に一時的に解除して貰ったのだ。



だから全然問題ないもんねー。


――ピコン。



到着音と共に扉がゆっくり開く。

一面真っ赤な絨毯が敷かれ長い廊下が続いていた。

両サイドの壁には骨董品や美術品など国宝級と思われる様々な品が飾ってある。



何度見てもすごいなぁ。これ。



手を伸ばせばすぐに届くこの距離感。

ケ-スに入れられずに飾られたそれを見ているとついつい生まれた出来心やちょっとした好奇心を刺激される。

もちろん志乃も「触ってみたい」と思う1人だ。
志乃は引き寄せられるように手を伸ばした。

後少して触れてしまいそうな手をピタリと止め首を左右に大きく振った。



…あ、ぶなーい。
またやるとこだったし。
時には我慢もって言うじゃん?
僕はここで学んだんだよねー。
あはははぁー…。



一体何があったのか…。

その時の事を思い出したのか、すでに体験済の志乃は乾いた笑みを浮かべた。
ここではない何処か遠くの方を見つめ軽く現実逃避だ。



あァ〜ぁ。えーっと。
出来る事なら次は仕掛け人希望かな。
…うん。そしたら楽しいと思うよ。僕が。
てかそれがいいよ。



一人うんうん、と頷いた志乃は何事もなかったかのように歩き出した。

最上階のフロア-にある部屋は奥の1部屋のみ。
しかし、ここにもセキュリティがかけられており、ロックを解除しなければたどり着くことが出来ていない仕組みになっているのだ。
エレベーターと同じくすんなり通れるようになってる。



…はずだよね?

なのに、一向に開く気配がないのはなぜ?

………???



扉の前に立ち開くのを待っていた志乃だが、センサーの反応が悪いのかと思いピョンピョン跳ねてみる。

そんな努力の甲斐も虚しく開く気配がない。



…えー…。うそぉ。もしかして、もしかする?



どうやらロックがかかったままのようだ。
解除してあると思ったいただけにショックで開いた口が塞がらない。

ここへは何回か来たことがあるのでロックを解除するのはお手のものなのだけれど…。



…め、面倒くさいなんてこれっぽっっっちも思ってなんだから!




物事は思い込みから。

楽しいと思えば何でも楽しくなるものなのだ。

志乃は自分に小さくエールを送ると、早速解除に取り掛かり始めるのだった。


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