FinalFantasyT
24.異変
「……っう…」
ウォーリアは、腕に微かに感じる痛みで目が覚めた。
隣には、腕の火傷にケアルをかけている優羅がいる。
うっすらと目を開けて確認すると、その視線に気づいたのか、優羅は微笑んでウォーリアの腕をとった。
「……優羅……?」
『大丈夫か?一応傷は全部治したけど……』
ウォーリアはそう言われて初めてさっきまで感じていた痛みがないことに気が付いた。
「ありがとう。すまない……」
『無理すんな…鎧のままは命取りだからな?』
「気を…つけておく…」
『他の三人はマリリスを倒しに行ってる……まぁ。黒魔術士のサルテがいるし…問題ないだろ』
「そう、なのか………!!!優羅っ!その手は!?」
ウォーリアは優羅の手を見ると目を見開いた。
手が、火傷のせいかボロボロになっていたのだ……
包帯を巻いているため、どれくらいなのかは分からないが…包帯を巻き付けた指には血が滲み、包帯を赤黒く染めていた………。
『あぁー。これなら別にケアルかけとけば治るからさ……』
………優羅は言えなかった…。
手の赤黒い血が火傷のせいではないことを……
誤魔化すように笑って離れようとすると、ウォーリアの手が優羅の華奢とはいえない手をとる…
『イッ!!!』
バッ!!!
掴まれた痛みで反射的に手を引くと、巻き付けていた包帯が外れた……。
その状態にウォーリアは声がでなかった……
「優羅……。その、手は…」
『っ……何でもない…何でもないからっ!』
ウォーリアから見えないように隠す優羅…
…しかしウォーリアは見てしまっていた…
人の手ではない…彼女の手を…
「なんでもない訳がないだろう!その手は…一体……」
驚いて声のでないウォーリアに、優羅は努めて明るく笑おうとしたが…痛みも相まってひきつった笑みになっている。
『………ははっ……。バケモノ……みたいだろ?』
優羅は片手を押さえるように握りしめる…
握りしめた手からは赤黒い血がポタリ…ポタリと落ちている。
そして…悲しそうに、何より苦しそうに笑う彼女に、ウォーリアは言葉をかけられなかった。
「手を…見せてくれ」
ウォーリアは少し考えた後、そう言った。
『……あぁ。分かった』
よく見ると、手は黒に近い肌色になり爪は鋭くなっている。そして何より………………。
手の甲に埋め込まれたような石がより優羅の苦痛を強めているようで、ウォーリアは只その手を見つめることしかできなかった………
『気味……悪いよな…これ』
「何時から…?」
そう言って、優羅の手を撫でる。撫でられただけでも痛むのか、少し眉間にしわを寄せて言う。
『ウォーリアをここに運んで直ぐ……。只の火傷かと思ったんだけどな………。どうやらそうじゃないみたいでさ…』
「痛むのか?」
『あぁ。正直…かなり痛い……』
ウォーリアは優羅の顔をじっと見つめる。
目が合うと、優羅は目を伏せた……
そんな彼女を見て、ウォーリアは彼女の手の甲に軽く口付けた…。
『っ!!』
「………そんなことは…ない…」
『ウォーリア……?』
顔をあげた優羅の瞳とウォーリアの瞳が再びかち合う。
「言っただろう?どんなことがあっても…君は君だ……」
しっかりと目線を合わせ、はっきり言い切るウォーリアの姿は、優羅にとってはとても眩しく思わず目を逸らしてしまいそうで……
しかし、そうはさせない気迫が彼から放たれていた。
「……ウォーリア…ありがとう…」
ふっと優羅は笑った……
普段の笑い方とは違う……
とても優しい…そして、直ぐにでも泣いてしまいそうな………今までで一度も見たことのない笑い顔だった………。
「優羅……」
『わっ!ウォーリア!?』
ウォーリアはいきなり優羅を自分の方に引っ張ると、自分の膝にのせる…
「これで少しは落ち着いたか?」
『……ウォーリア…これじゃ、逆に落ち着けない……』
恥ずかしそうにそう言うと、ウォーリアはクスリと笑う……
ムッとした優羅はウォーリアの肩に腕を回し、抱き締めた。
「優羅…………」
『ウォーリア………ごめん…』
「謝らなくていい……………それに、絶対に元に戻そう……」
『戻るだろうか……?』
「戻してみせる、必ず……」
もし、元に戻らなくても……きっとウォーリアなら隣にいてくれる…………そう思いながら、優羅はウォーリアに身を預け、眠りにつくのだった。
続く……
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