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叶わないと知っていても
3



「───帰るか…」



止まない雨を見つめて僕は立ち上がった。
来ないのは、しょうがない。
彼はそういう人だから。
今日会えないならメールを送ろう。
返事が返ってくるかもしれない。
そう思うと少し気持ちがラクになる気がした。



「静樹…」



後ろから聞こえてきた声は少し震えていた。
もう、行かなくては。
本当はいつまでも待っていたい。
けど時間はそれを赦してはくれない。



「ごめん和樹、行こっか」



振り返って、心配そうな顔をしているであろう弟を見る。
和樹の近くには大きなキャリーバックが二つあり、僕は片方受け取ると二人で歩きだした。



今日は引っ越しの日。
明日学校で会うことはない。
彼は僕がいないことに気づくかな?
いや和樹がいない時点で必然的にわかるか。
本当はクラスの皆に別れの挨拶ぐらいしたかったけど僕等はそれをやめた。
彼に別れを告げることが僕にはできなかったから。
僕がそう言ったら和樹は優しいからのってくれた。
だから彼が今日会いたいって言ってくれたことは、本当に嬉しかったんだ。
神様がくれたチャンスだと思ったから。





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あきゅろす。
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