不安 (連載2)
あたしは、どうしたらいいの?
(もっともっと強くなりたいと思った)
【不安】
隊長の霊圧は、正直あたしにもきつい。だから、他の席官と一緒に結界を張っていた。本当は隊長と一緒に戦いたい。(背中を護ると決めていたから)でも、この選択が一番だと隊長もあたしも考えた。
隊長の背後に虚は現れたときがぞっとした。大声で叫ぶのがやっとで、動けなかった。―――――目の前で起こったことが、最初は信じられなかった。
死覇装を身に纏った隊長と同じくらいの背丈の少女が現れた。ここからじゃよく分からないけど、隊長と話(というより口喧嘩のような言い合い)をしていた。あの子は一体誰なのだろう。そう考えてるうちに、2人は虚に向かっていた。一瞬目を瞑るほどの光を発したと思えば、虚は瞬く間に消えて暗雲だった空は徐々に晴れていく。2人が斬魄刀をしまう姿を見て、何故か心が痛かった。
(私が隊長の背中を護ると決めたのに)
背後をとられた隊長。
(護ったのは、見ず知らずの死神)
悔しさが顔を出した。
(隣に並んで斬魄刀を構えたのは)
副隊長のあたしは、ただ見ていただけ。
(一瞬で虚を"消した"のは隊長と、)
あたしは、何もできなかった。
「今日から十番隊三席になりました!桜井凛です♪松本副隊長、よろしくお願いします!」
「…え?あ、はあ…十番隊副隊長の松本乱菊です…?」
結界を解いて隊長のもとへ行くと、あたしが口を開く前に少女があたしに向かって元気よく挨拶した。(あの大量の虚を倒した後とは思えないほどの元気)
人当たりのいい笑顔にきちんとした挨拶。思わずあたしも畏まって頭を下げてしまった。
「なに急に畏まってんだ?いつもなら誰彼構わず抱きつくお前が…」
「…っあ、思わず…てへ☆」
「・・・?」
(密かな敵対心。その時、そんなものが芽生えていたことに、あたし自身気付かなかった)
「みんな軽傷ですんでいると思って四番隊は呼ばなかった。負傷者は?」
「あ、えっと…幸いみんなかすり傷です。あたし達の到着が早かったんで」
「…そうか。戻るぞ、」
「…はーい」
いつもなら、現世で買い物したいって言ってたけど…そんな気になれないわ。
「冬獅郎、これ終わったよー」
「…次、これを頼む」
「りょうかーい…。あ、これ終わったら休憩していい?」
「あぁ」
あれから1週間、2人の関係は分からない。(聞こうにも聞けない)分かるのは、雛森でも彼女…凛のことは知らないということ。幼馴染の雛森が知らないってことは、彼女は幼馴染じゃない。ただの同級生にしては仲良さげだし、恋人と言うには何か違う気がした。あえていうなら"一部"だと思う。1週間前の2人の息がぴったりなのを見てそう思った。
「…松本、お前もやれ」
「えー…もうちょっと休憩させてくださーい」
「…そうかそうか、そんなに副隊長を辞めた「嘘です嘘です嘘ですからそれは言わないでください隊長なら本当に遣りかねないので怖いですから!」…あ、あぁ…;」
前のあたしなら、"そんなこと言っちゃって〜あたししか隊長の背中を護れる人いませんよ"…なんて言ってただろうけど。(時と場合によって)
だけど、今は本当にそんなこと言えない。だって……(あの子は卍解していた)
護廷の中で、隊長・副隊長以外に卍解出来るのは一角だけ。あいつは絶対に更木隊長の下を離れない。だからきっと、彼女が卍解出来ると上に知られれば彼女は三・五・九番隊の隊長になるかもしれない。そう考えるとあたしの副隊長の座…いや、日番谷隊長の背中はずっとあたしが護れる。そんな答えに辿りくんだけど…。もし、隊長が彼女を副隊長にしたいと言ったら、あたしは……
―――あぁもう、うじうじ悩むのは似合わないのに。
「――――副隊長、松本副隊長??」
「はぇ?!」
「具合でも悪いんですか?ぼーっとしちゃって……」
「あらやだ、あたしったら……」
「あまり無理なさらないでくださいね?」
「心配してくれてありがと。でも大丈夫だから、ね?」
(何故か分からないけど、この子には……)
負 け た く な い
(これは、恋心なんかじゃなくて)
(ただの意地)
(分かり切ってるけど…それでも、)
不安で仕方ない。
"終わり"と言われていた十番隊のたった一つの光だった隊長。隊長が十番隊隊長に就任したときから、背中を護ると決めた。一生ついていくと決めた。彼のために生きて、生きて、生きて役に立とうと決めた。なのに、
(あたしは、どうしたらいいの?)
不安で仕方ない
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