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再会 (連載1)


久々に見たあいつは、死覇装を身に纏っていた。





【1:再会】




藍染終焉から数年。精霊廷は新たな敵を前にしていた。黒幕は分からないが、何百…何千、何万もの虚を従えているのはつい最近分かったことだ。大虚は最下大虚しか従えていないと報告されているが、数が数なだけに進化してしまえば3人の隊長がいない今の護廷では壊滅しかねない。
そこで、総隊長は霊術院に足を運んだ。それが1ヵ月ほど前のこと。異例の学生――「斬」「拳」「走」「鬼」のいずれかに長けた者を総隊長自らの目で定め、特例の卒業生を出し急速に護廷に入隊させ……つまり、死神の数を増やし下級虚を倒す。上級虚は席官に任せ、大量発生時には隊長格が出陣する。藍染のように瀞霊廷を襲撃されても対処できるように、なるべく上席官は廷内にいるように。そんな考えからの行動だった。そして、総隊長は100人近くの学生を選抜し、入隊させた。今の状況で新入隊士に罵声を浴びせるような奴はいない。俺のように見た目が派手でいろいろやっかみをかいそうな奴が数人いたが、同じことは繰り返さないのが護廷。みんな快く受け入れている。なんたって、今は人手不足でどこの隊も大変だから。その一言に限る。もちろん、俺の隊もそのうちのひとつなんだが…



「松本、今すぐ氷漬けにさ「ごめんなさいすいません申し訳ありません!」…初めからそうしろ」


副隊長の松本は執務が嫌いだ。苦手なわけではない。一度始めれば驚異の集中力を発揮してくれるが、サボり癖がついているためなかなか筆を持つことがない。サボる松本を探して執務室に連れ込むより、その時間に自分が書類を整理した方が早いと考えて暫く見過ごしていた。だが、最近やけに十番隊の任務が多くそんなこと言ってられなくなった。松本もそれを知ってか知らずか、俺の(脅しの)ひと言を聞くとすぐに紙の上に筆を滑らせ始めた。



「……あ、隊長、知ってますか?うちに入ってくる隊員、三席らしいですよ!何人かは平ですけど」


「あぁ、隊首会のとき(何故か)直接総隊長から聞いた。なんでも今期一の成績最下位の奴だそうだ」


「…え、大丈夫なんですか?最下位って…」


「誰だって最下位になれる。…ただ、総隊長の目は誤魔化せなかった。それだけのことだ」


「…?」


…たまに鋭いとか思うが、やっぱり鈍い松本。



「総隊長曰く、第二の"神童"らしい…」


「…あ、隊長とお揃いですね!!早く会いたいですっ」


「…あぁ、そうだな」


俺の知り合い…いや、それ以上の奴に1人だけそーゆー奴がいる。ただ、あいつは死神が嫌いで、俺が死神になるって言った時は大泣きして最後まで"死神にならないで"って言ってたっけ。だから、そいつが来るわけない…と思うんだが。あいつなら、ケロッとした顔で俺の前に現れそうだ。…そんな状況が簡単に想像できて笑える。

あいつは、凄い。死神でもないのに自分の霊圧を制御できていたし、喧嘩も負け知らず。(俺とはいつも相打ちだったけど)勉強したわけでもないのに、霊力を治癒能力に変えたりもできた。……そんなあいつを俺は守りたいと思った。だから死神になったんだ。

なんでも自分で出来るあいつ。だからあいつは誰にも頼らないで1人で何でもしようとする。…一度、1人で泣くあいつを見て俺は決心したんだっけ。




(あんなに力があるのに、死神にならないのは何故だろう)


(一緒に死神にならないか?そう聞いた時のあいつは迷っていたのに)


(何故、死神にならないのだろう)


(未だに分からないんだ)


(今、あいつはどうしてるだろうか)




一度、"もしも死神になったら"なんて話をした。あの時のあいつはノリで話を進めて、確か…どっちかが隊長になったら、その時はもう片方が副隊長になって、最強の隊にしよう!なんて言ってたっけ。(学院に入ったら、草冠とそう約束したな。…一生叶うことはなくなったけど)





「―――長、隊長!!!」


「…っ?!なんだ、松本」


「ぼーっとしちゃって…休憩たらどうです?最近根詰め過ぎ「誰の書類のせいで俺の睡眠時間が削られていると思ってんだ?」…んもー、心配してるんですよ?」


(心配するなら手を動かせ!!!)







「日番谷隊長!!」


「―――――なんだ?」


(急な訪問者に、焦りを感じた)










「チッ…報告ミスか」


「隊長、」


「―――松本、一気に片付ける。あいつらを頼んだ」


「…はい。隊長、お気を付けて」


松本を含めた席官に、負傷者や平の所に結界を張らせた。(俺の霊圧で負傷なんてさせてたまるか)この量の虚はきついが…卍解で一気に片付けてやる!






「卍解―――大紅蓮氷輪丸…っ!」




晴天は、一瞬で暗雲で覆われた。















「隊長、うしろ!!!!!」


松本の焦燥に駆られた声が耳に入った。虚は倒しても倒してもどこからか湧いて出てくる。元を叩かなきゃこっちの霊力が持たない。…そんなことを考えていたため、反応が遅れた。後を振り返った時はすでに遅し。虚の鋭い爪を持つ腕が、大きく振りあげられ俺に向かって来ていた。―――駄目だ、と思った。(足はまるで縛りつけられたように動かなかった)




(駄目だと思ったら、俺と虚の間に黒い影)





















「抗え―――黒百合…っ!!」


刹那、氷輪丸の力で曇った空は夜のように真っ暗になった。俺に向かって腕を振り上げていた虚は、目の前で消された。(後形もなく)




「アホくさ。あんた、あんなんに殺られる気でいたの?」


「…冗談ぬかせ」


「貸しひとつね」


「馬鹿やろ…五分五分(イーブン)だろ?忘れたとは言わせねえ」


「…最後に会った日のこと?あれは事故よ。泣かせたあんたが悪い」


「故意的だろ?院生の服、ぐしゃぐしゃに濡らしやがって」


「過去にこだわる男はモテないわよ?」


「結構。…それより、まずこいつらが先だ」



(懐かしすぎて、敵を前にして話し始めてしまった)


(松本になんて言われるか…)




「そうね。…私とあんたなら、これくらいわけないわよね」


「…当然」



氷輪丸を構え直して虚を見据える。(隣の奴と呼吸を合わせた)(久々なのに、ずっと一緒にいたかのように感じる)




「氷輪丸!!」

「黒百合!!」



名を叫べば、辺りはより暗くなる。だが一瞬、目を瞑るような光を発した。










「…久しぶり。会いたかったよ、冬獅郎」


「あぁ、俺も会いたかった……桜井」



懐かしき友…いや、彼女に再会を喜ぶ言葉を交わした。




"俺と付き合って欲しい"


"卒業して、死神になって…隊長にでもなったら付き合ってあげる!"


"その台詞、忘れんなよ?"


"うん。…まぁ、待ち切れなくなったら私が迎えに行くよ"


"……あっそ"


"可愛いっ冬獅郎!!"


"可愛くねー"



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