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!birthday!


「寒い寒い寒い寒い寒い寒「部屋に戻ってろ、凛」い寒い…私の心が寒いよ冬獅郎!」


「…何訳わかんねぇこと言ってんだよ。っと、そろそろ始めねえとな」


「ぐさり!今私の心に矢が刺さった!痛い痛いよ冬獅郎!誰かこの穴の開いた心を塞ぐでっかい絆創膏くれ!」


「…あのなー、今はお前のコントに付き合ってる暇ねえんだ」


ひっつんのバーカチービこんちくしょー!と近所迷惑にも叫びながら隊首室を出て行った凛。誰がチビだっ!と心の中で反論しつつも後を追わないのは、目の前の書類の山のせいだ!



「たいちょー?今のは隊長が悪いですよ?今すぐ追いかけてあげた方が…」


「主な原因はお前だからな、松本。お前が、非番を返上してまで俺が書類整理に付き合わなきゃなんねーくらい書類を隠してたのが原因だからな」


「(原因って2回も言った!)す、すみません…ははっ」


いつもなら、こんな時でさえ煎餅をバリバリと音を鳴らせて食べてる松本も、今回ばかりは筆を持っていた。心なしか表情が疲れているのを見ると、松本は反省してるんだと思い自分の手を動かし始めた。


何百年と生きている自分にとって、誕生日なんてたいして気にもしていなかった。彼女、凛と付き合うまでは。彼女は記念日やらを大切にする。「冬獅郎と一緒にいる毎日が記念日なんだよ」と顔を赤くしながら微笑む彼女を見て自分も感化された。俺達は流魂街育ち。自分が死んだ日も流魂街に来た日も知らない俺達の誕生日なんてかなり適当だ。そんな日ですら、彼女が「私と出逢ってくれてありがとう」「隣にいさせてくれてありがとう」と言うから、俺の中で凄く大切な日になっていた。

…それなのに。


誕生日の朝、凛と布団の中でのんびりしていると、ドンドンと強く扉が叩かれた。何事かと思えば、松本が俺に泣きついてきた。「減給してもいいんで助けてください!仮眠室に隠しきれないくらい書類溜まっちゃったんです!」なんて言った松本。今日くらいは勘弁してくれと言おうとしたが、話を聞いていた凛が「それなら仕方ないですよね」なんて言っちまったから、俺はこうして非番にも関わらず隊首室に籠っている。
凛の言いたいことは良く分かっていた。俺の性格を知っているからこそ、俺が渋って決断する前に松本に言ってくれたんだ。クソ真面目な俺は、嫌々でも引きうけちまう。口下手だから、断ることもできないんだ。…それに、俺に出来ることならやってあげたい、って気持ちがあるから。



「はぁ…」


「ため息つくと幸せ逃げちゃいますよー」


「今はその逃げる幸せすらないがな」


「(隊長辛辣!)…お茶入れてきますねー」


無意識にため息をついた。完全に松本に八つ当たりしちまったな。…あー、なんで凛を追っかけなかったんだろ。あいつが傍にいてくれれば、それだけでいいのに。あいつが一緒の時は、どんなことでも辛いだなんて思えないんだ。
















「あ、隊長!見てください!」


不意に松本が叫んで窓を指した。まさかこんな時に地獄蝶でも来たのか…?とげんなりした目を窓に向けると




「雪、か…どうりで寒いわけだな」


暗い夜空に映えるくらいの白い雪が降っていた。隊首室にだけエアコンを付けるのは他の隊員に申し訳ないと思って設置していない。だから、寒さも暑さも直に感じる隊舎内は、今は白い息が見えるくらい寒かった。……あいつは、ちゃんと部屋にいるのか?まさか、いつもの木の下で震えながら俺が追いかけるのを待ってたり…するわけ、ないよな?あいつもそこまで馬鹿じゃないはず。寒いと連呼してたくらいだから、きっと部屋でこたつにでも入って不貞腐れてるだろうな。…きっと、



「悪い、松本。すぐ戻る」


「いってらっさーい」








あいつはやたらと霊圧を消すのが上手い。きっと、鬼道が得意な雛森よりも。今も霊圧を探るがなかなか見つからない。俺は最悪の状況はないと確信したく、いつもの木の下に向かった。

あそこは、俺と凛が出会った場所であり、瀞霊廷を一望できるくらい高い位置にある。初めて会った時は、柄にもなく天使が降ってきたと思った。木の下で休んでいると、上から霊圧を完全に消した凛が落ちてきたんだ。うたた寝をしていたらすべって落ちたらしい。第一印象は天使。黒い死覇装を着ていたが、俺にはそう見えたんだ。







「…いない、か」



すぐにでも会いたかった。だけど、ここで会いたくはなかった。凛がいないことに安心して座り込むと、枝に積もった雪が落ちてきた。



「…なっ?!」

「ぅわあっと!!」





状況を理解するのには、あまりにも突然だったからか時間がかかった。



「えと、とうし、ろー?」


「…馬鹿野郎!何でこんな所にいんだよ!!」


へへ、と笑う彼女の身体は、驚くくらい冷たかった。もともと白い肌はもっと白く、いや、青白くなっていた。耳と指先は、真っ赤だった。


「ごめんなさい…ここにいたら、冬獅郎がすぐに来てくれるんじゃないかなーって思って…」


「もしかして、出てった後ずっとここにいたのか?」


「んーん?1時間くらい前にここに来たの。なんか、冬獅郎と初めて会った時のこと思い出してさー」



「…また、落ちてきたな」


「うん…また、冬獅郎の上に落ちた」


これって、運命なんじゃない?そう言う彼女が今まで見た事もないくらい可愛くて、何かが急激にこみ上げてきて、俺はぎゅっと彼女を抱いた。




「好きだ…」


「うん、」


「好きだ…」


「うん、私も大好きだよ」





これが"愛情"なんだと気付いた時には、俺と凛の唇は重なっていた。












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happybirthday
ひっつん!

多少雑な話…(土下座)


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