紅と麦の物語



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十二国記小説
誰んだー


あの時はどうかしていたんだ。
冗長な物語を読むかのように長々と続く話に、脳内が可笑しなものを分泌していた。
そうに違いない。
じゃないとあんなことするわけないだろ?








延々と続くかと思われるほど長いもの。

嫌というほど続く説教。

一番目の理由から今は何番目だ?

ああ、ちょうど十番目の理由か。


はあとこっそりとため息をつく女王に気付いているのかいないのか、
件の説教人間は「まだまだ続くよ」と言わんばかりに淡々と説教を続けている。

よくもまあここまで言葉が出てくるものだと、もはやあきれ果てている。

それはこの部屋の重鎮達すべてが思っているだろう。

桓タイなんてあくびをかみ殺している。
矛先が自分じゃないからだろうが、それにも目ざとく気が付く男は
今度はあくびを手に取って理屈をこねくり回す始末だ。
もはや手に負えない。


それほど悪いことをしたのだろうか。

ただ川に流されそうになった子供を助けただけなのに・・・

問題はそこではなく、濁流・生身・命綱なしという状況がこの男の琴線に触れてしまったのだが・・・


どうしてこれほどまでにしつこく身の危険について語れるのだろう・・・

陽子には不思議で仕方がなかった。

放っておいてくれ。
そう言いたいが言えない。言わしてもらえない。

本当に喧しい男だ。

心底そう思った。
これでは結婚はおろか、恋人すらできないのではなかろうか。
会えばああだこうだと長々と論じられるのはうんざりだ。


しかしもう十五の理由になるというのにまだ終わらない。

どうやったら終わらせることがだきるだろう。

あまりにも長すぎる説教を聞きすぎて、陽子の脳みそはすでに眠りかけていた。

ぼうっとした足取りで分かった分かったと呟きながら男に、浩瀚に近づいた。
間近で顔を見上げると、「何か?」と不機嫌そうに問う。

そしてまた口を開きかけられたので、陽子はただ、うるさい、とその唇を塞いだ。

本当に今思えばとんでもないことだ。
セクハラどころではない。
経営者がいきなり女性にキスしたら普通訴えられて最悪逮捕されるだろ?
あれと同じで、やってはいけないことだったのに、本当にどうかしていた!


胸元をひっつかみ、薄く冷たい唇に触れるだけの口づけをしているのだが、
睡魔と戦っていた重鎮達は一瞬で現実に引き戻された。
しかしその現実で起こっていることに頭は理解できても、
体が追い付かなかった。

え!?

と思っている間に陽子は体をはなし、静まり返った浩瀚を見上げてようやく静かになったと笑んだ。

「よっ、主上。男前。」

小さく呟くのは桓タイで、祥瓊はやれやれと首を振り、
鈴は口を覆っていたが目はにやりと形作っていた。





きっとどうかされていたのだろう。
でないと、あの主上があのようなこと・・・

随分と間近で陽子を見た。
何事だろうと思うも、一向に反省している様子のない主に、何とかその身の大切さを理解してもらいたい一心でもう一度口を開いた。

悪気なんてない。
単純に心配で心臓がもたないと感じたのだ。


どこで学んだのかわからないが、早業のように胸元をつかまれて自分の唇に暖かくて柔らかいものが触れた。

遠慮がちだったが、しっかりと密着したそれに浩瀚は硬直した。

先ほどまで脳内をぐるぐると巡っていた言葉は霧散した。

一瞬で浩瀚の言葉を奪った陽子は、どうだとばかりに微笑んだが、その笑みは浩瀚にとって凶器以外の何物でもなかった。





その夜、浩瀚は一人ごろりと寝台に横たわった。

目を閉じれば思い出す陽子の口づけに、湧き上がる欲と格闘していた。

確かに長々と説教してしまったが、それは主を思ってのこと。
なのにどうしてあのようなことをするのか!

いけないことなのに意識してしまう。

それにあんなに間近であの笑顔は駄目だ。
反則すぎる。

今やようやく表れた名君なりえるであろう女王に、
臣下達も首ったけになりつつある。

その美しさや逞しさを備えた少女にあれほど間近で微笑まれたら、
どれほどお堅い男でもくらりときてしまうだろう。

仕事はしっかりと責任をもってする。
それは当然のことだし、いったん没頭するとそれ以外のことは考えられないので良かった。

しかし、仕事が終わり、一人となって寝台に横たわると、
まるで走馬灯のようにあの出来事が脳内を駆け巡る。


「可愛かったな。」

ぽつりとこぼれた言葉は意外にも部屋に響き、
浩瀚は年甲斐もなく動揺した。

少し頭を冷やそうと外に出る。

雪は降っていないが、もしかしたら下界では積もっているかもしれないと感じるほど寒かった。

リン。
リンリン。

どこから音が聞こえた。

夜空を見渡すと、月を背に何やら不思議な光景が浮かんでいた。

獣に跨る人がいる。
その獣はどうみても騎獣ではなく、もっと野性的で凶暴な形をしていた。

どうみても妖魔だが、唯の妖魔が背中に人を乗せるはずがない。

「主上!!!!」

心臓がわしづかみにされたかと思った。

どこに行くのかと焦り、普段ならばありえないほど大きな声で怒鳴りつけてしまった。

大きな声は陽子の耳にもしっかりと届いた。
その声はいつもの冷静な声とは異なり、戻ってこいと有無を言わせないほど迫力のある声だった。

げっと下を見ると、背中からめらめらと炎でも出しているのではないかと思われるほど
怒りに満ちた顔の浩瀚と目があった。

怒った顔にも種類がある。
この男の場合、静かに、だが確実に大火傷をするだろう恐ろしさがその顔にしっかりと表れているのだ。

「うっわ、浩瀚だ。」

強行突破をしたら後が恐ろしい。
そう判断し、しぶしぶ地上に降り立った。

「こんばんは。」

できるだけ愛想良く、可愛らしく言ったが効果はない。

「ええ、ご機嫌うるわしゅう。
して、何をされているのでしょうか?」

口元は笑っているが、目はまったく笑っていない。

はっきり言って、その表情の下に般若のような形相が見える。

「怒ってるから言いたくない。」

子供のような言い分だが、どうしてこれほど行動に制限をかけられなければいけないのか、
ちょっとした反抗心が生まれた。

ちらりと見上げると、イラついたようにピクリと眉が上がる。

「怒ってるから言いたくない、ですか。
どうして怒っているのかお分かりですか?」

「どうせ一人で街に降りるなとかだろ?」

「お分かりでしたら話は早い。
夜中に女性が一人で歩くなど危険極まりない。
おまけに貴女は王なのです。もっと自覚をお持ちくださいませ。」

「王だって気晴らしくらいするだろ。」

延王だってそうだし、南には畑を耕す王もいる。

「私はこうやって一人でふらふらするのが気晴らしになるんだ!
班渠だっているんだから大丈夫だよ。」

「だめです。
せめて桓タイかコショウをお付けください。」

もはやその口元には笑みはなかった。

冷静さはあれども、頑迷に駄目だと言い張る男に陽子は泣きたくなった。

どうしてこれが温厚篤実だなんて評されていたのか理解できない。

「前にコショウと出かけたら怒ったじゃないか!」

「あれは無許可でお出かけになられたからです。
こちらがどれほどお探ししたのか理解されてないのですか?」

なぜ許可がいるのだとまたまた湧き上がる反抗心に、
ならばお前が付けば良いのだと怒鳴った。

はっとして口元を抑えたがもう遅い。

こんなに小うるさい男と出かける羽目になったら・・・
想像しただけで恐ろしい・・・

ぽかんと目を丸くして陽子を見つめる浩瀚に、陽子はどうしようと視線を彷徨わせた。

「私がここを離れるわけにはいかないでしょう?
王と冢宰が同時に王宮を離れては、万が一に対応できない。」

浩瀚は不思議だった。
陽子がした提案を受け入れたくて仕方がなかったのだ。
そして、浩瀚が一緒に来たら良いといわれた瞬間、先ほどまでの怒りがどこかへ消えていったのだ。

ああ、要するに自分はこの少女と二人でどこかへ行きたかったのだ。

聡い男は瞬時にそう理解した。

「行きますか?」

使令をここに留め置き、何かあればすぐに駆けつけるようにすれば良い。

「騎獣を使えば問題ないですし。」



今度は陽子がぽかんとする番だった。

先ほどまではダメだと言っていたのに、その舌の根も乾かぬうちに180度答えが変わったのだ。

どういう形であれ、街に降りられるのだ。
しかも今日はやることだってある。

純粋にうれしいと思い、にこりと笑った。

またまた目の前でにこりと微笑まれ、浩瀚は胃袋が弾むような感覚に襲われた。

高鳴る心臓を鎮めようと軽く胸元を抑えるも、
すぐに行こうとその手をぎゅっと握られ、引っ張られた。

騒ぐ胸を押さえるどころではない。

浩瀚の手を握る陽子の掌は、一回りは優に小さかった。
そしてひんやりとしていた。

騎獣にまたがり、浩瀚は当たり前のようにその後ろに騎乗した。
後ろから手をまわして、抱きかかえるように手綱を握ると、さすがに陽子が振り返った。

「セクハラだぞ。」

ぶっきらぼうに言う陽子に、「貴女がおっしゃいますか?」と答える。
何故セクハラなんて言葉知っているんだと騒ぐ陽子をよそに、
手綱を操り飛翔した。

風を受けてなびく陽子の髪の毛からは花のような香りがした。

思わず顔をうずめたくなった。

それほど良い香りだった。

しばらくは緊張でカチコチだった陽子も、そのうち楽だなと、浩瀚の腕にすっぽり埋まるように背中を預けもたれかかった。

その無防備な姿が恨めしい。

くしゅりとくしゃみをし、鼻をすする陽子。

「寒いですか?」

片手を手綱から離し、陽子の下腹部へ腕を回した。
抱き寄せるようにすると、ちらりと振り返った陽子と目があった。

浩瀚は、月明りを受けてキラキラと輝く瞳に魅入られるように目が離せなかった。

一方陽子も、月明かりを受けて随分と熱心に見つめてくる浩瀚の琥珀色の瞳が綺麗だなと思った。

口やかましい男も、こうして普段二人っきりになると静かな大人の男なのだ。

そう思うと、こんな風に体を密着させたり見つめられたりした経験のない陽子にはかなり恥ずかしい状況だった。

「な、何かついてるのか?」

静かすぎる空気が気まずくてそう問う。

「貴女に口を封じられたときを思い出しておりました。」

口を封じるという表現に陽子は首を傾げた。
そんなことをしただろうか。

「身に覚えがありません。」という表情でもう一度浩瀚を見る。

小さく苦笑する浩瀚は、「では、思い出させてさしあげましょうか?」と聞くや否や、
早業のごとく陽子の顎を掬いあげて、触れるか触れないかの位置まで顔を近づけ、
口づけをするふりをした。

一瞬の出来事に陽子は体をカチコチにした。
そして思い出した。

そう言えばあまりにも長い説教に嫌気がさして似たようなことをしたな・・・と。


「あ、あれは本当に疲れてたんだ。」

ふいっと顔を遠ざけて言い訳する陽子に浩瀚は軽く笑うと、
罪な方だなと呟いた。

「それより、もう少し北寄りに行ってくれ。」

一体どこへ行くのやら、手綱を取り上げ目的地へ向かう陽子。

リンリンと、先ほどから陽子が腰にぶら下げた袋から聞こえる鈴の音に、
浩瀚はしばし耳を傾けた。

「まるで妖魔みたいですね。」


くつくつと笑いながら言うと、それは悪口かと睨まれる。

「赤子の声を発する妖魔もいるくらいです。
鈴の音を発する妖魔がいてもおかしくない。
と思っただけですが?」

「だからそれ悪口だろ。」

まさかまさかとなおも笑う浩瀚を陽子は不思議に思う。

「爆笑」とかの種類ではないが、
この男も笑うのかと、そう思ったのだ。

口元目元が穏やかなために優しそうに見えるのかもしれない。
おそらく民も女官もこの表情に騙されているのだ。

けれど私は騙されないぞ!!!
ひそかにそう誓う。

夜の空を駆けるのは気持ちがよい。
後ろに浩瀚もいるため、背中が暖かくてほっとする。

ふと感じた安心感は、この男のおかげなのかそれともただ単に人恋しかったからなのか。

「浩瀚、星が綺麗だ。」

まるで星の間を縫っているかのような錯覚に陥る。
それほど星の一つ一つが近く感じた。

「ああ、本当だ。綺麗ですね。」

ほうっと息を吐く、星々を眺める。

騎獣は静かに夜空を駆けた。

そしてたどり着いたのは、三角の形の木々が生い茂る林だった。

「浩瀚、木のてっぺんあたりで止まってくれ。」

なかなか難しいことを言う。
そう思うが既に手綱から手を放し袋をがさごそと漁る陽子に何も言えなかった。

仕方がなく慎重に騎獣を操りできるだけ先端に近くなるよう寄せた。

「これをこうやってくっつけるんだ。」

鈴を木のてっぺんにつけると、次は隣の木へと移った。

そして次々に鈴をつけていく陽子に浩瀚は何をしたいのかなんとなく察してきた。


「これで全部だな。」

三角の形の木は、北方の寒冷地に生える木だった。
そして、この地はつい先日この王が助けた子供が住む土地でもあった。


「あの子供のためですね?」

「さすが、鋭いね。」

「寒冷地では春の豊作を祈り木に鈴をつけます。
しかしこの地は先日の豪雨で鈴をつけるどころではなくなった。
なるほど、それを憐れんで貴女がこうして赴いたということですか。」

少し冷たい声で話す浩瀚を陽子は仰ぎ見た。
その瞳には先ほどまでの優しさは一つもなかった。

「怒ったか?」
「いえ、怒ってはおりません。
ただ、お優しいなと。ね。」

「怖いな。怒ってるんじゃないか。」


ほうっと息を吐き、急に冷え始めた体の震えを男に悟られないよう抑えた。


「要するに、温情も偏りすぎてはいけないと言いたいのだろ?
このようなことをすれば平等でなくなると?」

「手短に言えばそうですね。
ま、これは貴女の性分みたいですし、これ以上は何も申し上げません。」

もう一度陽子を見つめる瞳には、温かさが戻っていた。

「朝までこうしてて良いだろうか?」

遠慮がちに問う陽子に、浩瀚もそのつもりですと答える。

「ありがとう。」

ほっとしたように答える陽子の顔には、また笑顔が戻っていた。

きゅっと上がった口角と、柔らかく微笑む瞳に浩瀚は呆けたように見入った。

これほど近くにいる少女を自分はどうしたいのだろう。

わからない。
ああ、これもあの日この少女があのようなことをするから!

しかし果たしてそうだろうか?

たとえ王とて、その身は天に守られているのだから、
天命が消えうせない限りそう簡単に死んだりはしない。

そのようなことは百も承知なのに、ほんの少しの危険にも敏感になる。
排除したくなる。
この王を害するものが憎くて仕方がない。

果たしてそれはどうしてなのか。

「浩瀚?」

急に押し黙る浩瀚に不思議そうに首をかしげる陽子は、
びゅっと吹いた風に震えそうになった。
両腕で体を抱くと、唐突に浩瀚が騎獣を降下させた。


小高い丘に着地し、騎獣にまたがったまま浩瀚に抱きしめられた。

それは暖を与えるためにとも思えるほどふわりとした抱きしめ方だった。

「風邪をひいては大変ですから。」

言い聞かせるように話す浩瀚に、もう一度ありがとうとつぶやく。

そして、そうえいば初めてだったな、なんていまさらながら思い至る。

「初めてだ。」

ぽつりとつぶやく陽子に首をかしげる浩瀚。

「初めて浩瀚って優しいんだなって思ったよ。」

茶化すように言うと、抱きしめる腕に力がこもった。

「私は優しくなんてありませんよ。
ただ、一人にだけは甘いですが・・・」

「へぇ、好きな人ってこと?」

「そうかもしれませんね。」

曖昧に答える浩瀚の表情をもう一度見ようと振り返ろうとするも、今度は強く抱きしめられて不可能だった。

案外太く硬い腕に、どきどきと胸が騒ぐ。


ふと強い日差しが照り始めた。
太陽が顔をのぞかせたのだ。

丘から見下ろせば、村人たちが起き始めていた。

明るくなったことで浮き彫りになった豪雨のあとに、
陽子は胸が痛んだ。
しかしそのような悲劇にも関わらず、村人たちからはうれし気な声がした。

手をたたくものや、他の村人を起こすために走り回る者もいた。

キラリと朝日を受けてきらめく鈴は、何筋もの光をその村に落としていた。
それはまるで天からの救いの手のようだった。


「帰りましょう。」

浩瀚の言葉に、名残惜し気に頷く。

帰る途中、陽子はふと尋ねた。

「誰が好きなんだ?」

唐突な質問にむせそうになった。

「さあ、誰でしょうね。」

言葉を濁す浩瀚にそれでもなお、
「えええ、誰なんだよ。気になるよ!
あっ分かった!私の衣装係の子だろ!お前この前あの子と話してたろ。
可愛いしスタイルよいしさ!」

「ああ、あの娘とは貴女の衣装について言葉を交わしただけです。
特に何も思っておりません。」

呆れたように、しかし誤解は解かねばときっぱり答える浩瀚に、陽子は誰だろうと考え続けた。

「知りたいですか?」

金波宮につき、陽子を部屋まで送る途中、
浩瀚は問うた。

「え、教えてくれるの?」

驚いた風な陽子を、こちらへと柱の陰まで手招きした。


そして唐突に触れ合った唇に、陽子の思考は停止した。

うっすらと開いた瞳がゆっくり閉じる。
案外まつ毛が長いのだと感心した瞬間、腰を抱き寄せられ、
先ほどよりも深く口づけられた。

角度を変えて吸い上げられ、最早何もわからなくなりそうになったころ、ようやく解放された。

ふらりと体が傾いた陽子の体を軽々と抱き上げる。

「さ、戻りましょう。
寝台がもぬけの殻でしたら女史殿が怒りますしね。」

未だに言葉も出ない陽子を抱きかかえ、すたすたと歩く浩瀚はどこか楽し気だった。

寝台にゆっくりと降ろされて、
「え?結局誰が好きなのか聞いてない。」
と呟くと、盛大にため息をつかれた。

「まあ、私も自覚したのは昨日今日のことですし・・・」

「は?」

「お慕いしております。」

「え・・・と。」

「迷惑でしょうか?」

真摯に問われれば、答えないわけにはいかない。
でも言葉は迷子になって出てこない。

そうこうするうちにパタパタと足音が聞こえ始めた。
金波宮も皆起床し始めているのだ。

「かまいません。
私の片思いでも、いつか必ず貴女に振り向いてもらいますから。」

そう言うと、さっと背を向けすたすたと歩き去る浩瀚。

それをぼんやりと見つめ、本当は夢ではないのだろうかとさえ思った。

分からない。

でも、嫌な気はしない。


今いえることは、それだけだ。

果たして今後この二人はどうなることやら。

夜通し起きていたのに眠気を感じない。

やはり脳内におかしなものが分泌されているに違いない。

ふっと息を吐き、ゆっくりと身を横たえた。






fin.

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あきゅろす。
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