08.戯れ(東一)
「………♪」
「猫が好きなのかい?」
猫じゃらし片手に、猫と遊ぶ。
盲目のこの瞳にはその姿は写らないが、感じる気配はひどく穏やかで暖かい。
「好きだよ」
「ふにゃ〜!」
「うわっ!」
ドンと言う音が耳に届く。
「大丈夫かい?」
手を差し伸べれば、手が重ねられる。
「痛たた…こいつ〜いきなり飛び掛かって来ちゃダメだろう?」
もう片方の手で抱き上げているのか、胸元で小さく甘えた声を上げる。
「アッ…と、ありがとうございます、東仙隊長」
「これくらい構わないよ」
ぺこりと頭を下げる彼女に、笑顔と手で顔を上げさせる。
「……ところで、君は家の隊の隊員ではないね?」
今更ながら聞けば、パッと体が離れる。
「すいません。こいつを追い掛けていたら、ここに来て…」
「いや、良いんだ。ただ気になってね」
知らない気配。
知らない霊圧。
君は誰なんだい?
「黒崎一護って言います。………きっとまた会いますから」
それだけを言って彼女は走り去って行った。
「黒崎一護……か…」
不思議な娘だと思った。
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