07.奢り(恋→一)
「本当にいいの?」
「おう!好きなだけ頼んでいいぜ」
きょとんと目を丸くする少女に笑って頷けば、まるで花が開くように満面の笑みを浮かべた。
たとえ懐が寒くなったとしても、この笑顔が見れるなら安いものだと……
・・・・・
・・・・・
安いものだと思え!!!
一護の予想以上の食欲に、見えないように握り締めた拳に力が入った。
「恋次は食わないのか?」
ぴたりと箸が止まり、向かいに座ったまま箸にすら手をつけない俺に一護が不思議そうな視線を送る。
「おいしいよ?」
小首を傾げる仕草は一層可愛い。
どうせならお前を喰いたいと、俺にもう少し度胸があれば言っていただろう。
「俺は……」
腹は減っているが、財布が不安で箸を持てない。
「恋次?」
「お、俺のことは気にせずに食べろって、な!」
真っ直ぐと見つめる視線に耐えれず、さらに注文をして一護の気を反らさせた。
「恋次」
「なん…」
呼ばれて顔を上げると、差し出された箸と煮付け。
というか箸で持った煮付け!こ、これはもしや…!!
「恋次あーんして♪」
「な!///」
やっぱりか!巷の恋人達がやっているという愛情を確かめあう行為!
「い、一護…///」
「?これ美味しいよ?」
しかも一護の箸!必然的に間接キス!
心を決めろ俺!こんなことは一生に一度だぞ!
「はい、あーん」
「あ、あーん」
パクッ
ヤベェ……俺もう死んでもいいかも…。
「恋次、涙流すほど旨かったのか?」
「ああ、もう死んでもいいかもしんねえ…」
財布のことなんてどうでもいいや。
至福の瞬間を味わう恋次の向かいで、一護はもう一度煮付けを頼んでいた。
後日
「腹減った……」
金が底を尽きた恋次は、極貧生活に耐え忍んでいた。
七. 奢り
この2人、恋次→一護の片想いで付き合っていないんです。
一護は恋愛のれの字も知らない天然っ子(笑)
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