未来
「…一護ちゃん、聞いてもええ?」
「ああ…」
奥へと足を進めていくほどその違和感は強くなり、ついに口を開けば一護は足を止めずに答える。
「なして…違う、そない遠回しは止めや……全滅しとるんやね?」
初めは躊躇っていたけれど、心を決めて言い切ったギンに、一護は足を止めて振り返る。
その瞳の奥に感情を封じ込み、息を吸い込み真実を紡ぐ。
「霊王の死後、王族特務を含め大多数の者達は記憶置換を施し尸魂界へ。残った王族特務は、私が生まれる前に隊長である黒崎一心を残して全滅した」
「全滅て…」
「生まれる寸前の私の魂を狙った、ウ゛ァストローデ一体を含む大虚の大群との戦闘の結果だ」
「…一護のせいやないよ」
自分のせいだと淡々と話すようにしている一護の震える手を取り、ギンは一護の手を頬にあてた。
ピクリと背を震わせた一護に、ギンは緩やかに笑う。
「それに、この状況ならボクがしたいことは意外に簡単に出来る」
昔のような体制ではどれだけかかるかと思っていたが、これならばとギンは笑みを深めた。
「ギン…」
「今までの霊王を壊すけど、ついて来てや一護」
先程とは逆にギンが前を進み、一護は手を引かれてギンの後を追う。
「離す気があるなら少し考える」
「あぁ、そりゃムリや」
手を引っ張っておきながらついて来てだなんて…と笑う一護に、ギンはニッと笑いたどり着いた王座の前に立つ。
「ボクらはこの世界から離れ、尸魂界に在る」
王座に遺されていた前霊王の意識がギンの声に反応し、人の形をとった。
『王を捨てるか』
「捨てへん。ボクは【霊王】で【市丸ギン】であの世界から全てを見る。見守るにはここは遠すぎるんや」
『ほう…独裁者となるつもりか?』
「ならへんわ、そない面倒なもん。ボクが【霊王】や言うことは総隊長にしか話さへんし、口止めもする」
『……一護、お前はどうする?』
ギンに既に迷いは無く、前霊王は娘でもある一護へ視線を向けた。
「ついて来いと言われたし、ギンの言うことにも一理有る。独裁者となりそうだったら無理矢理でも此処に連れてくるよ」
だから安心してと言う一護の言葉と決意に、霊王はギンの額に手を伸ばす。
『新たなる霊王と世界に光あらんことを』
千里眼と呼ばれる力の継承を終えると、霊王の意識は霧散していった。
「ほな行こか、一護」
千里眼でギンが見たのは、乱菊から伝わった事が尸魂界に伝わり大きく動揺していること。
「独裁者にならない限りはついて行ってあげるよ、ギン」
それはギンと繋がることの出来る一護にも伝わり、ギンの手を握り返す。
「あ、でもあれやなぁ…いつも副官が傍におるし、総隊長はんだけっていうのは難しいかもしれへん」
「あの人なら大丈夫だと思うけど?」
「そう?一護が言うなら信じるわ」
数分後
突然一番隊隊首室に姿を現した二人に山本が驚き、その二人の言葉にさらに驚かされるのだった。
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