焦燥
『一護……』
初めて出逢った時、オレはこの人のものになるのだと、自覚するより早く心臓が鳴った。
百花斉放
ゆらゆらと揺らめく霊圧を瞳に捕らえ、ゆっくりと静かに制御する。
それは単純ながらに疲労を溜める。
しかしそれは必要なこと。
「ツクヨミ…」
揺らめく霊圧が漆黒に研ぎすまれ、つぅッと汗が一筋流れて床へと落ちた。
ピリッと神経が張り詰める音がするような気がし、研ぎ澄まされた霊圧はまた揺れる。
「まだまだか……」
ふっと息を吐いて力を抜けば、揺らめいていた霊圧はカチャンと音を立てて物質と化す。
「まだ…アレは……」
思い浮かべるのは、告げられた言葉の中にいた少女。己のために犠牲となる可能性を与えてしまった、大切な仲間。
「早く……」
焦ってはならないとわかってはいるけれど状況は悪くなるばかりで、無理をすれば暴走・暴発を引き起こすと理解しつつも彼女の身を危険に曝すくらいならと焦る己。
止めるのは、血の繋がりこそないものの、誰よりも近しい女性。
今はもう会うことすら出来ない人。
「だけど……織姫が」
早くしなければ、きっと…傷ついてしまう。
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見切り発車
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