再会

再会
〜ギン再登場〜





「………な、何してるんですか!!!」

その日五番隊では、珍しく本気で怒りをあらわにした藍染が居た。








「つまらんなぁ…」

死神というものは、ボクが望んだものとはどうも掛け離れていたらしい。

「ちょっと、ギン!今日は護廷の死神の人が視察に来るって言ってたでしょう!しっかりしなさいよ!」

乱菊に言われても、ボクは動く気になれへんだ。
だいたいなぁ、こいつらと試合なんてしたら、ボク手加減苦手やから殺してしまいそうやもん…。


「アレは…」
「藍染副隊長?!」

教員が急に慌てて、現れた二人の死神の方へと走っていく。

「藍染副隊長て?」
「て?って知らないの?!」

乱菊に聞いたら驚かれた。なんでそないに驚くん?

「五番隊の副隊長で隊長クラスの力を持ってる人よ!」
「……五番隊なん?」

ギンにとってその隊は唯一の希望だった。

あの夕日の女をしっとるん?

「なんで一度も戦わないんだ?」
「うわっ!!?」

真っ直ぐに藍染を見ていると、ひょっこりと上から顔が生えてきた…改め、もう一人の黒髪の男が覗き込んできた。


「び、ビックリしたなぁ…」

急なことに心臓がバクバクと荒げた。

「驚かしたか?悪かったな」

けらけらと笑う死神は、絶対に悪かったとは思っていない。

「なんなんや、アンタ…」

不愉快でそっぽを向くと、死神は困ったように笑う。

「ゴメンゴメン。私に出来ることならしてやるから機嫌直せって、な?」

その死神の言葉に、ボクはピンとくる。

「ならボクを五番隊に入れて」
「…なんだ、お前うちを希望してんだ。あぁ、だけど入隊は隊長しか決定権は持たないぞ」

ぽかんとして言った死神に、やっぱりと思う。

「ならボクと勝負して、ボクが勝ったら隊長さんに推薦してや」

立ち上がったボクは、ボクより小さい死神を見おろした。

「私に勝つ?アハハハ、お前面白いなぁ」
「ボクは本気やよ」

大笑いする死神に、ボクは浅打を構える。

「へぇ……いいさ、私の死覇装に一打でも入れたら推薦してやるよ」
「随分な自信やなぁ」


余裕の表情をする死神に、ちょっとカチンときた。

ボクを甘く見ぃへんほうがええで…










「なかなかいい打ち込みだな」
「なっ!」

仕掛けたが、振り下ろした先に死神はいなかった。声は背後から聞こえ、慌てて振り返る。
横に滑らした刃は待たしても宙を斬り、死神は刀すら握らない。

「でも、斬ることに慣れていない?」
「…く…っ」

何度も何度も斬りに行くが、舞を踊るように死神は軽々と避けていく。





「そんなものか?」

突き出した刃を指二本で掴まれると、ぴたりと刃が動かなくなる。






ボクは浅打から手を放し、腰にさした斬魄刀に手をかけた。


「射殺せ、神鎗」
「っ…!」








「………まだまだやな、ボク…」

手応えはなかった。
死神はその場から僅かに横にズレて、ボクを見ている。


「ふふ、アハハハっ!やるじゃないか、ギン」

死神は額を押さえ、急に笑い出した。
何事かとボクは顔を上げる。


「あっ……」

ぱらりと一切れの黒い布が、ゆっくりと目の前に落ちる。

「当たったん?」
「まさか当てられるとはなぁ…」



「約束やろ、推薦してや!」

感慨深そうに斬れた袖を眺める死神に、ボクは言った。

「……推薦はしない」
「なんやて?」

死神の言葉に耳を疑う。





そんな呆然とするボクの目の前で、死神はボクに背を向けゆっくりと右手を上げる。




パサリッ

一瞬でボクと死神の間に立った藍染は、死神に白い羽織を着せた。背中の数字は【五】。それが示すのは?



「五番隊に入隊を認めるよ、市丸ギン」

目の前で黒から萱草色にゆっくりと髪の色が変わって行き、くるりと振り向いた時には既視感。




「死神になるといい」


「…隊長やったん?」

あの夕焼けの中で出会った死神。ボクの心を動かし、世界を変えた女性。





「正式な入隊の日を楽しみにしているよ」



「待ってや!名前を教えてや!」




あの時は聞けなかった。でも、今は


「一護だよ、ギン」

ああ、やっとボクの望んだ世界にたどり着く。














「ギン、アンタ凄いじゃない!……ギン?」

「乱菊…ボクやっとこの世界に生まれた気がするわ…」

もっともっと強くなりたい。
あの人に頼られるくらい強く、護れるくらい強く。
世界を与えてくれた《一護隊長》のために。


















「いやぁ、いい収穫があったなぁ♪」
「……隊長、本当に怪我は無いのですね?」
「惣右介…何度も無いって言ってるのにι」

スキップを踏む一護の腕を掴み、藍染は再度尋ねる。
一護は苦笑いを浮かべ、その手を放させる。

「隊ちょ」
「惣右介、私はギンを救えたかな?」

「……貴女がいる限りは、救われますよ」


遮られた言葉を飲み込み、寂しげな表情をする一護に答を返す。





「中途半端な救い方だ…」

はぁとため息を着く隊長に、藍染は何も言えず後ろに控えていた。





END



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