藍染Ver.

Ver.藍染

「健康診断?」
「はい。さっき勇音さんから全隊に伝令されたんですけど…」
「うん。…困ったね」

雛森は部屋に積み上げられている書類と、普段ならしっかりと自分を見ながら話してくれる隊長が手を止めずに慌ただしく筆を動かしている姿に困ったように入り口で固まってしまう。
藍染は雛森が自分の言葉を待っているとわかっているが、健康診断に行く気など全く無い。しかし面と向かってそう言うのは僕らしく無い。

「健康診断は大切だけど仕事のほうが大切だから、今回は見送ろうか」
「そ、そうですよね!」

雛森くんは僕の決断に表情を明るくして自分の仕事を再開させた。





*****





「…一護?」
「五月蝿い似非ヨ○様」


帰ってみれば一護はソファーに座り、何時になくぷりぷりとしている。一護が早いときは常に用意されていた夕食も用意されていないし、お帰りの言葉も無い。ずいぶんと不機嫌だ。

「どうかし…」

背中を向けていたので一護の前に行くが、くるりと方向転換をしてしまう。かといって手を伸ばせば身をよじって逃げる。

「僕は何か気に障ることをしてしまったのかな?」


「―――…健康診断サボった」

困ってしまい隣に座り尋ねれば、しばらくの沈黙の後小さな声で呟く。
その言葉の意味を理解しかねていると一護の体が小刻みに震え出す。

「何でサボり魔のギンまで来てんのに藍染さんが来ないんだよ!」
「い、一護?」

どこかが悪かったのかと一護の肩を掴むと、一護がその手を振り払い涙目で睨み付けてくる。
急に泣いてしまった一護に僕はうろたえてしまい、冷静な判断が出来なくなってしまう。

「まさかギンに何かされたのか?!」

だったらきゅっと締めてしまうから、と言ってみるが一護は横に首を振る。

「藍染さんが、藍染さんが悪いんだ!」
「僕が?いや、だけど今日は一度も一護に会わなかったと」
「だから!っう…オレ、藍染さんを待ってたのに…」

僕に抱きついてきた一護に体を固め、頭をフル回転させる。しかし言えば言うほど一護の声は悲しそうになり体の震えは強まる。

「一護…」
「恥ずかしいのに我慢してナース服なんて着たのに」
「ちょっと待て。……一護、今何て言ったんだい?」

僕は一護の背に腕を回し、ぽんぽんと宥める様に優しく叩く。だんだんと落ち着いてきた一護は鼻を啜りながら聞き捨てなら無いことを口にした。ぴたりと手の動きを止めた僕を不思議そうに見上げた一護ににっこりと笑顔を見せれば、逃げ腰になって離れようとするがそう簡単に逃がす気は無い。

「一護?」
「う、な、ナース服を着ました」
「うん。なんで?」
「卯ノ花さんが健康診断だからって…手伝ってくれって」
「そう。で、誰に見せた?」
「え、隊長格は五番隊以外皆来たから」
「そう…一護、僕はちょっと出かけてくるから。逃げたら駄目だよ」

すくりと立ち上がった藍染さんは伊達眼鏡をはずしオレから離れる。その表情は清清しいくらいに笑顔だ。
本気で切れてる。
それに気づいてしまったオレはこくこくと無言で頷くことしか出来ず、出て行った後も逃げることなんて出来なかった。
外からは破壊音が響き、時折聞き覚えのある叫び声が混じる。それは聞こえないふりをして、どことなく遠くを見ながら帰ってきたら何されるのかなぁ…と他人事のように考えていた。

翌日は健康診断の手伝いをしたということで休暇をもらった。
決して布団から起き上がれなかったからじゃないからな!!///



end




あきゅろす。
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