Andante
「よぉ、一護!」
「ヒャッ!!う、浮竹さん?!」
突然やってきた浮竹に、一護は驚きの声をあげ、ベッドの上から転げ落ちた。
「大丈夫か?!」
「だ、大丈夫です。だけど、急にどうしたんですか?」
藍染達の裏切りで、尸魂界はいまだバタバタしているとルキアから聞いていたのに。
心配そうに差し出した手を取り立ち上がると、浮竹さんは一つ咳払いをした。
「いや、朽木から聞いてな…」
浮竹さんは目を泳がせて照れ臭そうにする。
「その、今日はバレンタインデーという…」
そこまで言った所で、浮竹さんは言葉を止める。
ついでにオレの顔もゆでだこのように真っ赤になった。
準備はしていたけど、去年までは男として生活していて、初めてのことでどうすればいいかわからずごちゃごちゃ考えていると…あっという間に夜。
「あ、あの、その…///」
チョコを隠した机は、浮竹さんの後ろ。
「……貰えるのかな?」
うろたえるオレに苦笑い混じりで聞いてくる浮竹さんに、限界です。
「あううぅぅっ…///」
「一護!」
ぱたりと倒れて意識消失。
オレのバカぁ!!!
急に熱を出して倒れてしまった一護をベッドに寝かせ、浮竹は汗を拭いてあげた。
「困らせてしまったか…」
聞けば昨年まで男として生活していたらしい。
女の子の行事は慣れないだろう…だけど欲しいと思うのが男心なんだよな。
「すまない、一護」
聞こえてはないけれど、頭を下げて謝罪すると、うなされるような声が洩れ出す。
「つくえの…なか……」
「一護?」
かろうじで聞き取れた言葉に机を見る。
勝手に開けるのは悪いと思うが、好奇心には勝てない。
「本当にすまん」
がらっと開けると、綺麗に包まれた箱が一つ。
「これは?」
持ち上げると、カードがぱらりと床に落ちた。
カードを拾い上げ、その文字に笑みが浮かぶ。
「……こちらこそ、宜しくな」
眠る一護の額に一つ軽く口付け、囁けば笑みが浮かぶ。
「おやすみ、一護」
「うき、たけ…さん…」
窓から浮竹が消えると同時に、一護は幸せそうに微笑んだ。
『大好きな十四郎さんへ
HAPPY Valentine!
これからも宜しくお願いします
一護』
END
あとがき
一番甘かった…?