知られざる真実


知られざる真実






「嫁に来い」

あぁ、まただ…ι

目の前に立つ秀麗な美貌の男に、一護はため息をついた。


「白哉…」

「何も心配することは無い。安心して朽木家の嫁となれ、一護」

人の話を聞いてくれない貴族様は、私の言葉を遮って自己解釈する。
勿論、その解釈は間違いだ。

「いや、だからさぁ、何度も言ってるけど、私は白哉の嫁にはなれないって」
「そやで、一護ちゃんはボクのお嫁さんになるもんなぁvV」


また増えたι

ため息混じりにお馴染みの説得をしていると、これまたいつも通りギンが背後に現れた。
抱き付こうとしたので、ギリギリ瞬歩で逃れた。
「いけずやなぁ一護ちゃんはvV」

全く落ち込むこともなく、ギンはニコニコと笑顔のまま私を見る。


「……兄が一護とだと」

いつもよりもさらに低い声が、白哉から発せられ、上がった霊圧に空気が震えた。

「そうや、貴族みたいなかたっくるしいとこ、一護ちゃんには似合わんしなァ?」

ニマニマと喧嘩を売るような(むしろ売っています)ギンの態度に、白哉の片眉が上がる。

「兄のような不真面目な男は一護に合わぬ」
「六番隊長さんみたいな堅物とおったら、一護ちゃんの息が詰まるわ」


本人完全無視の罵り合いが始まり、一護は今のうちだと思い、足音を立てないようにその場を離れようとした。













「まったく仕方の無い二人だね」
「うひゃあ!?」

ぽふんと前から抱きしめられなければ、確実に逃げられたのに…。


「あ、藍染隊長ι」
「一護くん…僕の所にお嫁に来ないかい?」

一番厄介なのが来たー!

一護は泣き出したくなるのを我慢して、首を横に振った。
似非臭い笑顔の中の、獲物を狙う目が一段と強くなる。


「狽ソょっ、藍染隊長抜け駆けせんといてや!」
「一護を嫁にするのは私だ」

言い争いをしていた二人も藍染に気付き、騒ぎは大きくなる。



(一層のこと本当のことを話したい……でも恥ずかしいよー!)

一護の葛藤を横目に、三人の嫁取り合戦は、ついに斬魄刀を使用する域にまで達していた。

跳ね上がる霊圧に、あちらこちらから悲鳴と倒れる音が聞こえる。


「やめ…」

止めようと声をかけるが、またしても完全無視。

プチリと一護の中で何かが切れ、ふるふると体を怒りに震わせ、一護は大きく息を吸い込んだ。


「私は喜助と結婚してるの!!!」


るのーるのーるのーと、エコーがかかるくらいの一護の叫びに、ぴたりと三人の動きが止まる。





「きすけ…?」
「喜助って」
「まさか…」


「「「浦原喜助か!?」」」


意外と息が合うんだね…なんて見当違いなことを考えつつ、一護は頷いた。


「嘘や…一護ちゃん、そんな嘘ボク信じんもん!」

あんたはどこの子どもよι
ギンのあまりの子供っぽい言葉に苦笑いし、


「一護…私を見くびるな」

またしても自己解釈する白哉の言葉にため息を落とす。


「………」

そして、やけに静かな藍染さんがすごく恐いのよ。




「とにかく、そういうことだから!わ…」

私が言葉を繋ごうとすると、ギンは聞きたくないと叫びながら、白哉は心が決まるまで待つと言って、瞬歩で走り去った。
一人だけ何かを考え込む人が残った。





「藍染さん、だから」

「でも彼は尸魂界(コチラ)にはこれないからね」

(ダカラナンデスカ?)

言葉を遮り、ニッコリと笑って私の腕をガシリと掴んだ藍染さんに、冷汗が頬を伝った。

「帰さないで置けば君はボクのものというわけだ」

(自分勝手な考え事しないでーー!)

いつもとは違いニヤリと笑った藍染さんに、思わず涙目になって逃げようとした。

「逃がさないよ」
「や…!」

腕を振りほどけたかと思うと、回された腕によって腰をグイッと引き寄せられた。


「ッ…」
「捕まえた」

耳元の声に、悔し涙が溢れ出した。

「その手を放せ」

涙が地面に落ちると同時に、その声が耳に届いた。

「喜助?」

見上げると月色の髪。いつもと違う死覇装姿だけど、まぎれもなく喜助だった。





「藍染、俺の妻に手を出すな」
「…まったく、怖いね」

紅姫が首筋に当てられ、藍染は小さく笑って一護から手を放した。

離れたのを確認して、浦原は一護を抱き寄せる。

「またやってみろ…今度こそ紅姫の餌にしてやる」


泣いている一護の頭を撫でながら、浦原は藍染を睨みつける。
そんな浦原の怒りに呼応するように紅姫がないた。



「一護くん、またね」

そんな浦原の様子に笑みを深め、藍染はさらに煽るような言葉を残し、その場から消え去った。


「あの男…!」
「きすけ…」

どこまでもイラつかせる藍染に、浦原が追い掛けようとすると、一護が死覇装をギュッと引っ張った。


「一護サン?」


「喜助、俺って言うんだね…なんか口調も違っていたし」

名前を呼んであげると、一護は顔を上げ、少し落ち込んだように喜助を見た。
その言葉に、浦原は昔の口調に戻っていたことに今更気付く。


「小さい頃から一緒にいて、喜助のこと知ってるつもりでいたけど…知らないこと、まだ一杯あるんだね…」

「一護サン…スミマセン」

寂しそうに小さく笑う一護に、浦原は謝る。



「何で謝るの?」

「いえ、だって、俺なんて言って一護サンを怯えさせてしまいましたから…」

「?私、カッコいいって思ったんだよ?」

「ハイ?」

キョトンと目を丸くしてしまった浦原に、一護は笑って言葉を続ける。

「いつもの優しい喜助も好きだけど、さっきみたいな喜助もカッコいいよ」


にっこりと愛らしく笑う一護に、浦原は陥落した。


「一護サン…早く18になってください」

約束のせいで手を出せないことに苦しみつつ、浦原は一護を抱きしめた。












後日
浦原が永久追放を免除された話は、尸魂界中に瞬く間に広がった。
ちなみに、その理由は明らかにされてはいない。




「あれ、浦原じゃないか」
「浮竹…」

「隈がスゴイけど、寝不足か?」

ぼんやりと風に当たっている浦原を見つけたのは偶然だった。声をかけてみると、振り返った目元にはひどい隈があった。

「寝不足だな…ここ最近、夜は寝れなくて…」

むしろ死にかけに見える浦原の喋り方に、浮竹は少々心配になる。

「寝れないって、どうしたんだ?」

「一護が……」
「一護が!?」

「はぁ……」


橙色の髪をした尸魂界のアイドル(つい先日結婚していたことが発覚)の名前に、浮竹は何事かと先を促すが、浦原は重苦しそうにため息を一つ。



「一緒に寝るって聞かなくって…」

「……別にいいじゃないか、結婚しているんだから」

惚気か?と浮竹は目を細める。

「浮竹…お前好きなやつと一つの布団で寝て何もしないで居られるか?」

「何も……していないのか?」

「約束なんすよ……18まではって…」

浮竹は驚愕のあまり声を震わせて聞くと、浦原は縦に頷く。



「………つらいな」


浮竹は、もうその一言しか声をかけてやることが出来なくなった。



END


後書き&後付け

浦一夫婦物の割に他のキャラが出張ってしまった…ι
特に藍染サン限りなく黒いし出し過ぎたーっ!(反省中)

タイトルの「知られざる真実」とは、
@浦原と一護が実は夫婦だったこと。
A浦原が永久追放を免除された理由
B浦原が一護に手を出せない約束
のことです。

蒼月様
長らくお待たせしたくせに苺設定を活かせず、さらに夫婦色が薄くてスミマセン!
蒼月様に限り、文句はいくらでも受け付けますm(__)m





あきゅろす。
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