ある日の参観日?
今日はやけに院内が騒がしい。まぁ…理由はわかっているけどな…
獅炎は、隣で他の皆と楽しそうに話をしている妹を見て、溜息を着いた。
「んで、参観日なんてあんだよ…」
来ることが出来ないと、謝っていた母親を思いだし、眉間のシワを一層深めた。
忙しいのはわかっている。自分ももう何もわからないガキじゃないから、両親がどれだけ重要な仕事をして、気軽に休めないかをわかっている。
わかっているけど納得できないんだ。
こんなこと、父親に言えばガキと言われるだろうし、大好きな母親に言えば困らせてしまう…
実は来ないことを言ってない妹は、今日の放課後には落ち込んでしまうだろう。
「お兄ちゃん?」
「……ん?なんだよ、雪」
様子がおかしいことに気付いたのか、それとも何か用なのか、雪は座ったままで見上げてくる。
「あのね、今日は模擬試合だって」
「……へぇ」
やっぱり悔しい…父さんはいいとして、母さんにはカッコイイとこ見せたかったな…
告げられた言葉に、テンションが下がった。
「獅炎、雪〜!」
聞き慣れた声。
幻聴まで聞こえてきやがった…。
「あ!ママ、パパ〜!」
「え?」
首を振って正気に戻ろうとしていると、雪が声のした方に手を振って、花が咲くように満面の笑みを浮かべた。
ゆっくりと半信半疑で、淡い希望を持ちつつ振り返れば、白羽織の集団と橙の髪の人。
「なんで隊長・副隊長が勢揃いしてんだよ!!」
ついついツッコミを入れてしまう事態になっていた。
「……仕事だ」
質問に答えてくれたのは、やはり父さんだった。
「仕事?」
「ふぉふぉふぉっ。主が日番谷と黒崎の子か、ふむ…」
さらに投げ掛けた問い掛けは父さんに届かず、前に現れたのは、
「や、山本総隊長殿…」
霊術院の創設者にして、死神達のトップ。
やはり、威厳がある。
「ほう、父親によく似ておる…」
真っ直ぐに見られると怯みそうになるが、それも悔しくてぐっと睨みつけて耐える。
………嬉しそうに笑われた。
「あ、ギン〜!」
「雪ちゃん、会いたかったわぁV」
こちらが混乱しているうちに、腐れロリコン変態狐野郎が、雪の声に反応して近づいてきやがった。
「破道の」
「雪に近づくんじゃねぇ」
こっそりと滅殺を試みようとしたが、それより早く父さんが斬魄刀を狐の喉元に突き付けた。
さすがオレの父親。
「……ひどいやんシロちゃん!ボクが何した言うん?!」
「存在自体が犯罪だ。雪、近づいたらダメだからな」
一歩下がり騒ぎ出した腐れ(以下略)にすっぱりと言い放つ父に、改めて目標はこの人だと再確認した。
「ええもん…一護ちゃんに慰めてもらうもん!一護ちゃ〜んvV」
ガバリと、こともあろうかオレの大切な母さんに腐れ(以下略)が抱き付いた。
「猛り燃えろ、火社!!!!!」
怒りのあまり、思わず斬魄刀を始解してしまった。
ついでに斬りつけた。
「っとォ!……あ、危ないやないけ!」
ギリギリで避けられて、羽織にわずかに焦げ跡がついたくらいだった。
火社は物足りなさげに火花を散らす。
「母さんに触るな、市丸ギン!」
はっきり言って、こいつだけは隊長であっても敬意を払いたくない。
「…獅炎」
「父さん…!」
無表情のまま静かな声で名を呼ばれ、びくりと肩が跳ねた。
礼儀を損ねたから、怒られる!
「と、冬獅郎!!」
「っ!」
上げられた腕に、母さんがあげた制止の声をききながら、オレは、来るだろう痛みに目を閉じた。
「…?父さん?」
しかし痛みは訪れず、頭を撫でられる感触にそっと目を開けた。
「お前の言う通りだ。アレに敬意なんて払う必要はねぇ」
どうやら、同感されたらしい。
「狽ネッ!!一護ちゃ〜ん!ひどいやん、あの父子(泣)」
「ギンが、いきなり抱き付いてくるからだろうι」
またしても抱き付くギンに、一護はため息を着いた。
「市丸、黒崎から離れるんじゃ」
ピリッと霊圧が放たれようとしていることに気付き、山本は市丸を諌める。
その霊圧の場所は言うまでもなく、
「冬獅郎、獅炎…落ち着けって」
自分の旦那と息子だ。
ちなみに娘はというと、浮竹隊長にお菓子をもらって、上機嫌で話をしている。
「あの…‥」
その中に、度胸がある教官の一人が冷汗を掻きながら話し掛けてきた。
「そろそろ、参観授業を初めても宜しいでしょうか?」
「あ…ハイ。すいません」
なんで俺が謝らなければならないんだろうと思いつつ、子ども達を引き渡した。
さすが今期卒業生、なかなかの試合っぷりに隊長達は面白そうに見ていた。
「あらぁ、模擬試合は兄妹対決なんや」
最後に出てきた二人の生徒を見て、市丸は意外そうな声を上げ、冬獅郎を見る。
「他のやつらじゃ相手にならねぇんだよ」
ちらりと一瞬だけ市丸に視線を向けた冬獅郎は、すぐに視線を戻し、吐き捨てるように言った。
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