忠犬ハチ公の日(恋一)※姉弟パラレル




「一護、今日も来てるぞ」
「…あのバカι」

隊長に指差された先、朝別れた隊舎の前、同じ場所に赤い髪が見えて思わずその場にしゃがみ込んで頭を抱えた。

「仲良いよなぁ、お前ら。でもなぁ俺の兄弟も仲が良いんだぜ♪この前なんて空鶴が俺のために花火を作ってくれたしなぁ、岩」
「海燕五月蝿い」

ぽんと肩に手を置いた海燕はオレの気持ちもわからずに嬉々として兄弟自慢をし始めるから、ついつい手加減を忘れて思いっきり後頭部を蹴り飛ばしてしまった。予想していなかったのかまともに受けてしまった海燕は赤頭の方へ吹っ飛ぶ。

「Σうわッ!!」
「あ」
「おいおい、当たったぞι」
「…まぁ、大丈夫…だと思う」

壁を突き破った先で聞こえた悲鳴に隊長が苦笑いをしつつ大丈夫か?と聞いてきたので、オレは根拠は無いが大丈夫だと言っておいた。まぁ、あのくらいで壊れるようなら死神にはなれないし、ならせる気はないからな。

「っう…一護!」
「へ、一護?」

やはり無事だったらしく海燕が怒鳴り声を上げ、少し遅れて気の抜けた声が耳に届く。

「一護!!仕事終わったのか?終わったなら早く帰ろうぜ!」
「……一護?一護姉様だろう、恋次」

赤頭が顔を覗かせ、尻尾があれば振り切れそうな笑顔で走ってくる。オレの前までくると手を掴み、はしゃいで口にした言葉にオレは恋次の頭に拳を振り下ろした。

「ッツウ…!!一護は一護じゃねぇか」
「もう一発行っとくか?」
「スミマセンオネエサマ」

生意気を言う弟にグッと拳を握って見せれば、長年の付き合いである恋次はオレが本当にやるとわかり素直に謝った。笑いながら下げた頭をくしゃくしゃと撫でる。

「素直が一番だ。―――隊長」
「あぁ、今日はもうあがっていい」
「ありがとうございます」

隊長は快く許可を出してくれて、オレは頭を丁寧に下げる。隣では恋次も軽く会釈をする。今度きちんと目上の者に対する礼の仕方を教えてやろうと思った。








翌朝

「恋次、お前どこまで着いてくるんだよ」
「行ける所まで」
「はあぁぁぁ」

一護は溜息をつくけれど、俺としては心配なんだよ!一護は綺麗だしスタイルは良いし、しかも性格もいいんだぜ?絶対にもてるんだよ!そのくせ自分のことわかってねぇから『オレみたいな男っぽい奴を好きなんて物好きはいねぇよ!』って言って…。
ここに一人居るんだよ!あぁクソなんで俺って弟なわけ?!…でも弟だったから一護の傍にいられるんだし。

「はい、ここまで!」

一護の声にはっとして顔をあげるとすでに十三番隊の隊舎前だった。いつも朝には一護と別れ、夕刻に迎えにくる場所。

「じゃあ、オレは仕事に行くから、お前は勉強を頑張るんだぞ」
「……」
「恋次?」

その扉一枚先に今の俺は入れない。この門の前で待つだけ。

「俺、今年の統学院の試験を受ける」
「…そうか」

離れるのイヤだ。
だけど、追いつきたい。

「一護に追いつくからな!」

また姉だと言われる前に俺は逆方向に走り出す。
だから、一護が照れたようにバカ…と呟いたことは入隊して聞くまで知らない。


END




あきゅろす。
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