横町の日(ギン一)


「ここ…どこだ?」

同じような家が並ぶ薄暗い路地裏。
茜色の髪をした少年が一人闇に覆われ出した空を眺めて呟いた。
しかし返事が返ってくるはずも無く、少年はとぼとぼとまた歩き出す。闇が落ちるまでは活性化していた商店街だが、店が閉まってしまうと人通りも無く物悲しい雰囲気が身を凍えさせる。

「寒い…」

春とはいえいまだ梅が咲いている季節。昼間は太陽の熱が空気を暖めてくれるが夜は違う。地熱の残らないこの時期の夜はまだまだ寒い。

「…ここで死んだらどうなるんだろう?」
「死なへんよ」

世界に一人きりになったような感じがして思考はだんだんと落ち込み、ぽつりと不安をもらすと上から声が落ちてくる。

「寂しかったん?ボクのうさぎちゃん」
「…ギン」

スタンと降りてくると、冷えた一護の体をすっぽりと包み込むように抱き締める。外に出るときには必ず巻かれているさらしのせいで柔らかな感触が無いことが残念だとギンは密かに思いつつ、何時に無く大人しく反論の無かった一護を腕の力を少し緩めて覗き込む。

「…寂しかった」
「そっかァ…ごめんなぁ」

ぎゅっとギンの死覇装を握り締める一護の目元は濡れ、声は擦れていた。本気で寂しがっていたと気づくと、ギンは一護の体を抱き締める腕の力を強くし、もう片方の手で頭を撫でてあげた。

「でも大丈夫やよ。ボクは一護のことならすぐにでも見つけれるかんな」
「うん」

落ち着いた一護はギンの死覇装から手を離し、背中に腕を回す。

「でも、オレこんな横町で迷子になるとは思わなかった」
「そこが一護の可愛ええ所や」
「バカ」





静かに陽の光は消えていき、空は闇のカーテンに覆われていく。
暗闇の中で、無数の銀色の光は陽の代わりに二人穏やかに照らした




END




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