+novel+ ※『疵痕』カブサス オレが大蛇丸のアジトに来てから3ヶ月が過ぎていた。修行以外にも新薬だ新術だと言ってやたらと実験台にされることがあるけど、力を手に入れるためだからしょうがない。 けど、まさかこんなことになるんて…。 「サスケ君、新薬が出来たから実験をするよ。」 またか…。午前中の修行を終え自室で昼寝でもしようと寝転んだ矢先、カブトに呼ばれた。返事もせずにのろのろと起き上がり乱暴に扉をひらくと、あからさまに不機嫌な顔で睨みつけてやった。 「ハハハ、そんなに警戒しないでくれよ。」 警戒?オレがお前ごときを?笑わせる。 今思えばカブトの、この異常な機嫌の良さで気付くべきだった。 + + + いつになってもこの部屋のニオイには慣れない。 天井は剥がれ掛けていてところどころ褐色の染みがついている。棚にはホルマリン漬けの蛇やら、元が何なのかわからない動物の剥製がズラリと並んでいて、相当な悪趣味だと思う。 薄暗くて湿っぽい空間の真ん中にポツンと医療用のベッドが置かれていて、そこに横たわっている時はいつも言い知れない不快感を覚える。 「辛くなってきたら教えて。」 カブトはそう言いながらオレの腕に如何にも毒々しい色の薬品を注射した。 「っ…!」 薬品が腕に入ってくると、途端にそこが熱く痺れた。痺れはじわじわと広がって、まるで全身が心臓になったみたいにドクドク脈打った。じっとしていられないような、変な感覚が迫ってくる。 呼吸が苦しくなって、額には汗が滲んだ。 ―けど、この感覚は…。 「…これ…何の薬だよっ…!」 オレの様子を眺めていたカブトは、首を傾げてオレの問いには答えず「少し強すぎたかな?」と独り言のように呟き、「しばらくしたら治まるだろうから我慢してね。」と言い残して部屋を出て行った。 ベッドに取り残されたオレは、ビクビクと震える体に爪を立てて理性を呑み込もうとする欲求に必死で耐えようとした。 ―でも…、もう、ダメだ…。 + + + 下半身は何も身につけず、仰向けに横たわって太腿が脇腹に触れるくらい開く。こんな醜態、正常な思考だったら絶対に赦さないのに。 今はただ、早く気持ち良くなりたい…。 まだ弄ってもいないのに完全な形になっているソコに指を絡めて、貪るように擦る。さっきの薬のせいなのか、先っぽからは透明な液がトロトロと溢れ出して止まらない。 「んっ…ぁあっ…!」 下腹部が痛いくらいにヒクついてそのたびに、自分が出してるとは思えない鼻にかかった淫らな声があがってしまう。普段よりも鋭敏になっているから、抑えられる余裕なんて無かった。 無意識に跳ねる腰のせいでベッドがギシギシと音を立てるけど、カブトが戻って来るかもというプレッシャーさえも、今は快楽に変わってしまう。 限界まで張り詰めたアレはもう絶頂寸前だ…。 「その薬、相当気に入ったみたいだね。」 「っ!?」 いつの間にかカブトがすぐ足元に立っていた。口の端には笑いがにじみ出ている。 オレは慌てて自身から指をはなそうとしたけど、それよりも早く指ごと握りこまれてしまった。 「はっ…はなせっ…ああっ…!!」 そのままグリグリと乱暴に擦られ、オレは呆気なく腰を突き上げて吐精した。 これも薬の作用なのか、いつもより多い白濁はオレの手から、腹、胸、さらには顔までドロドロに汚した。 「まだまだ足りないんだよね…サスケ君?」 カブトはこれ見よがしに手を汚している体液を舐め取ると、オレの下腹部を指差した。指摘されたように、たったいま射精したオレのは萎えることを忘れたように起ち続けている。 とっさに放ってあった服を引き寄せようと手を伸ばすと、両手首をひとまとめに押さえつけられた。 普段ならこの程度の拘束くらい簡単に抜けられるが、今はまったく力が入らない。それがわかっているのだろうカブトは、押し倒されたままむなしく体をよじるオレを満足げに見下ろし言い放った。 「ここからが本番だよ…」 + + + あの日から、オレの腕には赤黒い内出血の痕が絶えない。あんなに屈辱的なことをされたのに、オレは度々カブトにあの薬をねだるようになってしまった。 何故かわからないけど、定期的に欲しくなってしまうのだ。 でも、そんなことはどうだっていい。 ただ今日も快楽に溺れたい…。 「大蛇丸様、例の薬の研究結果が出ました。」 「で、どうなの?前回よりも依存率は上がってるのかしら?」 「はい、ほぼ毎日と言って良いくらいです。」 「ククッ、アナタも悪趣味ねぇカブト…。」 「殺人と等しいほど抵抗があるものと言ったら、プライドの高い彼なら性行為ではないか、そう提案したのは大蛇丸様じゃないですか。」 「そうだったかしら?それにしては…、随分と楽しんでるみたいじゃない?」 大蛇丸の蛇のように鋭い眼光がカブトを射ぬく。 「めっそうもない。私はただ、大蛇丸様の命令に従うだけです。」 「ならば、そろそろ媚薬としての成分を殺人衝動に切り替えなさい。」 ほどなくして、その薬は失敗作として終わるのだが、当の本人はこのような会話があったことを知る由もなかった。 +END+ [戻る] |