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元素

陰陽



世界の全ての物を構築するモノ

それらは真理と類似している


僕の世界を構築する者


揺らめく炎と
数多の潮水が


記憶を、形作る





構成成分





遠く

遠く

遡る



『下弦の月』



あれは確か君が生まれた日
忘れることは無いだろう


君が知らずとも
僕はその場に居たのだから


「見ろ!俺の息子だ!!」


子供のように目を輝かす兄が

すこしだけ
寂しかった


「おめでとうございます、兄上」


口を流れ出るように
言の葉が結ばれる…


争いを生まない為に
生涯僕が身に付けた知恵



言葉とは裏腹に

憎かった
嫉ましかった

君という存在が

僕など居なくても構わないとさえ思った

幸せに縁遠い僕は
消えてしまえれば楽なのに、と



でも…
憎しみに塗れる自分が
何より疎ましかった


真っ直ぐな紅い瞳が
黒い部分を照らし出した



***



それから直ぐだったのだろうか
何もかもどうでもよくなったのは


『荒法師』



怖れられた



『武蔵坊弁慶』



千本の刀を集めるなんて
ただの気晴らしでしかなくて

僕の力を測りたい
僕の力を見せ付けたい

そんなことは傲慢で
民が勝手に思い込んだこと


力の提示をしたいんじゃない


誰か気付いて



『苦しみを』




五条の鬼の悲しみは

鈍光を帯びて
歪んで映る


それは極めて純粋な想い―――



***



五条の水面に煌めいた



『上弦の月』



潮の香りは
今でも鮮明なのに

炎の色は
焼き付いているのに



『寂しい』



今日も橋から人を待つ
千本目の刀を奪う為


「武蔵坊弁慶…だよな?」


振り返れば

目を見張るほどの




『紅い色』





懐かしさ
愛おしさ

求めつづけて枯渇していた
心が満たされて


時が一瞬間



『止まる』





君は



『ヒノエ?』





・…終止符の鈴鐘…・




***


手を伸ばして抱きしめた
離さぬように

強く
強く

願う



終りはいつかくる始まりの音

出会いの声



今ここに



記憶の根底にあるモノ


『君』


という成分で出来ていた


『僕』





Fin



あとがき
朱雀阿弥陀さまへの提出作品として書いたものです。

とても人間らしい醜い嫉妬心を純粋な心として描き出しました。
やっぱり欲のない人間なんぞいやしませんて。

それからヒノエは義経の立場として確立しております。
パラレル気味なので、苦手な方はすみませんでした。
管理人の妄想では1000人目がヒノエだったら、ヒノエが大事な人になるのかなぁーと思います☆


読破有難う御座いましたm(__)m



2006.10




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