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赦さないという約束を
死んだら許さないよ
僕以外に殺されるなんて、そんなの
赦すわけ、ないでしょ?





赦さないという約束を







「どうして」


君は死んだら許さないってそういったはずなのに。


「なんで」


僕は生きてここにいるというのに。


「雲雀くん?」


もう夏も終わりに差し掛かり、夕方の河原は少々肌寒い。
頬を撫でる風には秋が見え隠れしていて気持ち良いし、夕焼けは空を綺麗に染め上げて美しいがそれとこれとは話が別だ。
どうして逢って第一に咬み殺されて、こんなところに寝転がっているのだろうか。
体中がギシギシヒリヒリ悲鳴を上げて当分動けそうになくて退屈だというのに、
傍らに寝転がる君はちっとも口を利いてはくれないし。


「僕がなにしたっていうんですか」


本当に、全く。
なんにも気に障る事なんてしてないはずなのに。
はぁと何度目かのため息をついて、手持ち無沙汰に自分の武器を取ろうとしたら、掴まれた。


「ちょっ!?」

「さっきからうるさいよ、君。」


動けない僕を覗き込んで何が楽しいんでしょうか?
まぁ雲雀くんの顔を見ればどんなにか不機嫌だということは直ぐに解る訳ですが。


「・・・いきなり何してくれちゃってるんですか、怪我したら痛いんですよ。」

「自業自得」

「はい!?」


抗議の声を上げると「そんなこともわかんないの?」という表情を向けてきました。
解らないから訊いているというのに、面倒くさいひとですね。


「まぁ、好きになってしまったのだから仕方がないですよね。」


自分を納得させる為に心の中で言ったつもりなのに、声に出してしまっていたようです。
雲雀くんは僕の手を強引すぎるほど強くひっぱった。
その顔は恐い。
アレですよ、ここに沢田綱吉がいたら卒倒してしまうような殺気を出して。
この時僕はさっきの言葉を口に出してしまったのだと確信しました。
でもここはツンの君がデレっとする場面なのでは・・?とそんなことを考えてる場合ではありません。
だって、それがないのだとすれば、僕は。


「今、なんて言ったの?」

「っ!あぅ・・・っ」


ギリっと手首が千切れてしまうのではないかと思うほどに掴まれて。
痛みに耐える喘ぎを押さえる事が出来なかった。


「・・・答えなよ。」


驚く程に冷たい瞳。
やっぱり僕は君に、嫌われていた?
あんな凄い約束めいたことまでしたはずなのに。
ぽろぽろと僕の内から溢れて零れていくモノがあったように思う。


「僕、死にます。」

「は?」

「死にますからっ」


僕はその場から逃げるように走って行った。



***




『僕以外に殺されるなんて、そんなの』


それだけを信じて。
振り返らなかったけれど、追いかけて、追いかけて、追いかけてきてと零れてゆくモノと共に願いは止まなかった。
痛い程に握られた真っ赤に腫れた手首に触れると君の温もりがあった。
僕より少しだけ低い君の体温。

大好き、大好き、大好き


「ひばっ雲雀くん・・」

「大好きなんです。」


僕は走る足を止めて、ぎゅっと手首を握りしめた。
ぱたぱたと君の痕に零れては流れる暖かいモノ。


「コレ・・なみだ?」

「骸っ!!」


ふわりと背中に温もりがくる、僕より少し低い体温。
君が傍に居る。


「許さないよっ、死ぬなんて勝手は赦さない。」


荒い息と震える腕にまた涙が零れた。


「ひばり、くん」

「・・っひとりで泣いてたの?」


返す言葉が見つからなくて、一つ返事にコクンと頷いた。
そうしたらさっきよりも柔らかく、だけどしっかりと優しく抱きしめてくれた。


「馬鹿だね。」

「雲雀くんがバカなんですよ、僕は君しか好きじゃないのに。」

「骸・・・」

「でも!君は僕の事嫌いなんでしょう?凄く痛かったんですから!」

「それは君が!」


真っ赤に腫れた僕の手首を見て、バツの悪そうに声を張り上げる雲雀くんに内心にやりと笑ってみた。


「違いますよ、僕を信じてくれなかったからココが痛いんです。」


そうやって意地悪く心臓をトントンと叩いてみせる。
これが僕のちょっとした仕返しなんですよ。


「・・・っ」

「君がココにキスしてくれたら痛いの治ります。」

「なっ!?」


目を見開いて咄嗟に距離をとる雲雀くん。
少し前までならここで傷ついてしまうところですが、もう知っているんです。
君が僕を好きでいてくれている、ということに。
だって群れることを極端に嫌う君が追いかけて来てくれるんですから。

だから押してもダメなら引いてみろ、なんですよ。


「・・・やっぱり僕の事嫌いなんですね。」

「な、なんでそうなるの!」

「じゃぁ好きと言って下さい。」


僕がにこにこと笑っていると、雲雀くんは観念したように、崩されたペースにほんの少しイライラとしながら


「〜っ判ったよ。」


ちゅ。

一言と、キスをひとつくれました。


「ほら、これでいいんでしょ?治ったの?」

「はい、ばっちりです!」

「・・・そう。」


真っ赤な顔をした雲雀くんはやっぱりツンデレなんだなぁって思いました。
だってそっぽを向いても僕の手をちゃんと握っててくれるんです。
温かい、僕よりも少し低い体温。





好きが沢山、溢れて零れて。
受け止めてくれるのは君で。
信じているのは君の言の葉。



死んだら許さないよ
僕以外に殺されるなんて、そんなの
赦すわけ、ないでしょ?




はい、僕も君が死ぬなんて絶対に赦したりしませんから。
覚悟して、下さいよ?
いつもいつまでもずっとずっと一緒にね。



***



「ところで雲雀くん」

「何?」


一悶着も解決して、はたと思い出した。


「なんであんなに痛くしたんですか・・僕何もしてないんですけど」

「それはっ」


何気なく訊いたのに、雲雀くんはすごく動揺していて僕の頭の上の?は増えていった。
中々言い出そうとしない雲雀くんの顔を覗き込んでみると、りんごみたいに真っ赤だった。


「あ、赤ん坊が君が綱吉を好きだと言ってたから」


やっと聞けた言葉を頭の中で反芻する。
えぇとそれは・・
僕が沢田綱吉を好きだと思い込んだ雲雀くんが「まぁ、好きになってしまったのだから仕方がないですよね。」という言葉を聞いて、だから。


「・・・それってただの勘違い?」

「うるっさいな!」


恥ずかしい図星を指摘され、少し怒った雲雀くんが握っていた手を乱暴に離す。
でも僕はそれさえも愛しくて、ふいに笑みが零れた。


「クフフ・・・」

「何笑ってるの!」


ムスっとしたままの君が振り向いて、なんだかとても気持ちが暖かい。
目が合ってにこっと微笑むと「バカじゃないの」と呟いて、2歩手前を歩く君。

その背中にひとこと!


「嬉しいんですよ、君が妬いてくれたんですから」

「そんなこと言ってないよ!」


夕日もとうに沈んだ土手の上、トンファーが飛ぶまであと5秒。
夏の終わりにきた青春はどうなってゆくのでしょうか。





end




あとがき
某サイトさまのムクヒバに触発されて、ヒバムク書きました(こんの天の邪鬼!)
ギャグにね、しようと思ったんですが、いかんせんそういう才がないものですから、中途半端にorz
ひーっ申し訳ない!
というか最初の方シリアスっぽかったのに、結局甘く終わるんですか。

うんうん、今作は何故かとっても楽しんで書けました(にっこり)
ここまで読んで下さりありがとでした!

2009.01





あきゅろす。
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