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have a hope
涙が出そうになった
僕を守るその背中は
まだーーー



have a hope in the remote future.
・・・遠い未来に希望を・・・





「骸、大丈夫か?」

キーンと耳鳴りがし、酷く歪んだ廃工場の天井を見つめていた僕に、差し伸べられたひと回りほど小さな手。
視界が歪んで顔が見えない。
ただ判るのは敵ではないという事と、どこか懐かしいという事。

「大丈夫なのか?」

ノイズの中から辛うじて聞こえるような声に耳を澄ませば、やはり懐かしさがこみ上げてくる。
血まみれの己の手を挙げ、「君は誰?」そう問おうとした刹那、ドーンと地響きに似た音でそれはかき消されてしまった。
咄嗟に「逃げなければ」と頭の中で危険信号が木霊し、力の入らない体を叱咤するも、どう足掻いても動けそうになかった。
諦めようと目を閉じると左肩に鈍い痛みが走り、僅かばかりの浮遊間を感じた。
僕はその小さな手に導かれるままでいた。


***


『・・・ろ・・骸・・』

遠くで声がする夢を見ている。
あれはそう、君でしたね、綱吉君。

『骸、今回のヤマは危険なんだから注意して』

『はいはい、解っていますよ。』

『全く・・相変わらずの生返事だなぁ。』

『僕がやられるとでも思っているんですか?』

『違う、ただーーー』

はっと目を開ければ青い蒼い空が見えた。
いつもいつも同じところで醒めてしまう夢。
君の優しいあの一言を聞けずに醒める、まるで呪いのような最後の。
そう思うと体が震えた。
まさかあれが君との最後の会話になるだなんて。
誰が想像した?ボンゴレが、君が死ーーー

「骸っ!」

「え・・・?」

耳を疑った、間違いないこの声は

「綱吉、君?」

「そうだよ、骸、酷い怪我だったから・・・気が付いて良かった。」

今にも泣き出してしまいそうに震える君を掠れた視界で捉えた。
朧げに見えても綱吉君だとハッキリ解る。

「どうして?君は・・・」

あの時に亡くなったはずなのに。
僕を守って死んで逝った、君の最後を看取ったのはほかでもない僕なのに。
そう戸惑ってると「へにゃ」と綱吉君らしい笑みで、僕の手を握った。
この手は先ほどの懐かしい小さな手。

「10年後バスーカ、それで来たんだ。」

成る程、これで合点がいった。
この手に懐かしさを感じたのは君だったからなんですね。
こんなにも愛しくて止まない君の。

「綱吉君、逢いたかった。」

僕が子供が求めるように手を伸ばせば、寂しさと嬉しさの混ざった笑みで優しく抱きしめてくれる。
この温もりを手放さないように、ぎゅうっとシャツを握る手に力を込めた。

「もう逢えないとばかり思っていたのに・・」

「骸・・・」

綱吉君は困ったように悲しく笑う。
ただ青い空を見つめる橙の瞳は、水を受けた炎のように揺れていた。
手に込めた力が強まったと同時に、あどけなさの残る瞳が真剣に僕の瞳を捉えていた。

「ここにはお前を守る俺はいないんだな。」

はっとした。
そうだこの綱吉君は10年後の未来を知らない君だ。

「すみません、綱吉君っ!君を守れなかったのは僕なんです。僕の、せいで君は・・っ!」

僕の思考は後悔に支配されて、あの時を思い出して涙が出そうになった。
後ろめたさに君の瞳から目を逸らした僕の頬に優しく添えられた手。

「違うよ、骸のせいじゃない。俺は家族を守った、それだけだよな?」

覗き込むように向けられた悲しげな微笑に罪悪感が増し、触れている温もりが悲しみを増幅させる。
耐えきれなくて、涙と怒声が溢れ出た。

「でもっ僕は君の守護者だっ!
君を守れないなら・・・

僕が死んでしまえば良かったのに・・・!」

ふわりと頬を撫でる暖かな手のひらが優しく言葉を遮る。
贖罪にやっきになる僕を赦してくれるかのように「そんなこと言わないで」と言葉無くともそう言われた気がした。
それだけが凍てついた心を溶かす魔法のように、やんわりと心に染みていく。

「骸のせいじゃない。俺はただ、お前が無事ならそれがいい・・いつもそう思ってるよ。」

信念を奥に潜めた暖かさを持つ優しい微笑みと言の葉に、ドクンと心がざわついて、夢の続きを見ているよう。
そう、あの時も君は僕にそう言った。
『お前が無事ならそれがいい』と、優しい言葉と優しい笑みで、そうして独り逝ってしまった。
聞きたかったはずの言葉がまるで悪夢のように反芻する。

「やめてっやめて下さい綱吉君!!」

「骸?!」

「そうやって君は僕を置いて逝く。」

目を閉じても耳を塞いでも思い出す、あの時の笑みを消す事が出来ない。
綱吉君に触れる体がカタカタと震えて止まらない。


ドーン!再び地響きのような音がし、その方向から人の声がする。
突然の出来事に反応しきれない弱った僕の体から離れた綱吉君。
死ぬ気の炎を纏って敵に向かう後ろ姿を僕は幾度見た事だろう。
引き止めるよりも寸分早く、敵に突っ込んでいく君をどうしようもなく見つめながら、次々に上がる悲鳴を聞いた。
立ち上る砂埃の中から姿を現した君に安堵しながら目を閉じると、唇の温もりが触れて消えた。


「俺はまだ死んでないよ、お前のために未来を変えてあげる。」



涙が出そうになった
僕を守るその背中は
まだーーー
幼いあの頃だったから。


END





あとがき
ムクツナのつもりがツナムクのようになってしまった感が・・・否めませんね^^
骸が可愛くて、ツナがカッコ可愛いと、そうなるのは必然ですか。そっか、そっか。
やっぱり10年後ツナが居なくなって一番悲しむのって骸なんじゃないかって思います。
人気の無いところで1人泣き伏してるイメージ(どんだけー)
すんごいツナさんに執着してたからなぁ。

白兎は骸は攻めなのに受けだと思ってます。
ごめんなさい、意味不明ですね。
それではここまで読んで下さりありがとうございました!


2009.01






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