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夢が教える

毎回、夢を見る。

奈落に落ちそうな男が助けを求める夢を、何処の誰とも解らない。
男の顔はいつもぼやけていて見えない。
自分はというと、暫く崖っぷちに立ち尽くしずっと男を見ていた。

男は自分に助けを求めているようだった。
むろん、助ける義理なんてないから手を貸す事なんてしない。
嫌、始めは助けようとした。
したが、身体が動かない。
ずっと、ずっと男が落ちるまで見るしかないのだ。

だんだん起きる度に吐き気がするようになってきた。
理由は、男が奈落に落ちる時の断末魔がやけに耳に残るのだ。
その夢が、断末魔が聞きたくない余りに研究を理由にずっと寝ていなかったが人間は睡眠しなければ死んでしまう。
本気で執事が心配し始め、ついに睡魔に負けてしまった。















夢をみる。
夢だと解るいつもの夢。

今回も自分は崖っぷちにいる。
ああ、下を見るとまたあの男がいるのか。
嫌だと思うが、その思いは通じない。
下を見る。

(っ!?)

見た瞬間思わず顔をしかめる。
そこにいたのはいつもの男、男なのだが今回は顔がはっきりと解る。
その顔はよく知った顔。

(…エルシャールッ!)

言葉を発しようとしたが出ない。
助けようとしても動けない。
男がレイトンだと解った瞬間自分は必死になった。
でも、何も出来ない。

早くしなければ、早くしなければ!
いつもの夢なら後少しで落ちてしまう!
彼の悲鳴など聞きたくない!!

その間にも、男は必死に助けを求める。

「助けて、助けてくれ!ジャンッ!!」

ついに落ちる。
身も震えるような断末魔をあげながら。

「エルシャールッ!!!」

やっと声に出せた手も差し出せた。
しかし、すでに男は奈落。
自分はその場に座り込んでしまった。















「…ぅ」
「お目覚めになりましたか」
「……あぁ」

吐き気がする。
執事が心配そうに私の顔を覗き込む。

「悪い夢でも見られたのですか?」
「……」
「もし、悪い夢でしたら私(ワタクシ)にお話ください」
「何故だ?」

吐き気がする。
覚えてたくないのに鮮明に覚えている夢。
それを話せだと…?

「悪い夢を見た時に、その夢を他人に話す事で悪夢は取り払われると耳にします。ですから、私にお話くだされば旦那様に潜んでいる悪夢は取り払われるでしょう」

執事の話を聞いてあの夢を話そうか悩んだが、すでに己の口は動いていた。
洗いざらい悪夢を話終わると(男が誰だかは教えなかったが)何だか胸の詰まりが取れたようだった。
吐き気もすっかりなくなり、執事が用意してくれた紅茶を飲みながら久しぶりにリラックス出来てる自分がいる。
話を聞き終った執事はこう言った。

「左様でございますか。もしかしたら、近い内にその方と親しくなるかもしれませんね」
「…?」

どういう事だという顔で首を傾げる私に、執事は微笑みながら言葉を続ける。

「人が死ぬ夢は、その方と親しくなれる前触れなのです」















最近悪夢は見なくなった。
あの時聞いた話は馬鹿馬鹿しい話と思っていたが、今は執事の話は本当だったと思っている。

(ガチャ)

「やあ、デスコール。紅茶はいるかい?」
「ああ、頂こう」

今彼は私に微笑んで出迎えてくる。


END

20100917



あきゅろす。
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