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無意味、無意味

今、ロンドンは生憎の雨。朝から、ざあざあザアザアと憂鬱になるほど降っていた。
研究所で、生徒達が提出した論文に一通り目を通し終えた部屋の主エルシャール・レイトンは一人溜め息をつく。今は夜。深夜というわけではないが、人が外を出歩く時間でもない。大学内も多分警備員を除いてレイトン位しか残っていないだろう。
先程よりも、雨が強く降り始めた。

(そろそろ帰らないと家に帰れなくなるな)

レイトンは、椅子に掛けてあった上着を羽織り傘を手に持ち自宅に帰る事にした。
建物から出ると雨の音がいっそう激しく聞こえる。傘をさしシルクハットが濡れないように気をつけながら早足で歩く。暫くすると前方から人が歩いてくる事に気が付いた。しかし、雨のせいで前方がハッキリしない。普通なら、人が来た程度の認識でそのまま素通りするのだが、レイトンはその影に見覚えがあった。まさかと思い彼は早足から走るに変えた。

雨の中、デスコールは傘もささずに歩いていた。帽子も耳当てもファーもマントもびしょ濡れになりながら。全てが今の彼には、どうでも良かった。何も考えず、何も感じずただただ歩き続ける、無意味な時間…。無駄な時間を過ごす事が嫌いな彼は、何故か今の時間が居心地かった。しかし、次の瞬間でそれは打ち消された。
雨が止んだ、のではない。耳には耳障りな雨の音が聞こえる。では、何故頬に刺さるあの冷たいモノが急になくなったのか。デスコールは、目の前にいる人間の顔を見た。よく知っている顔がそこにはいた。彼は傘の中に、デスコールを入れたのだった。

「やあ、デスコール。こんな日に、傘もささないで出かけると風邪引くよ」

心配そうな彼の顔。しかし、今のデスコールにはどうでもいい。

「…別に、傘をさそうがささないが私の勝手だ。レイトン」

差し出された傘を拒絶し、また冷たいモノのが頬に刺さる。何時ものデスコールに、レイトンは苦笑しまた話しかける。

「そうかも知れないけど。目の前に、傘をささず今にも風邪を引きそうな人に傘を差し出さない訳にはいかないよ。英国紳士としてはね」
「それが敵対する相手でもか」
「もちろん」
「お前は、正気か」

レイトンは、腕を伸ばしデスコールのマントに隠れた腕をとる。一瞬の出来事でデスコールに抵抗する時間はなかった。

「は、離せ!」
「ほら、こんなに体が冷え切っているじゃないか」
「体が冷たいだなんて、差ほど問題ないだろう。いい加減に離せ!」

何も考えず、何も感じず、無意味な時間。デスコールは、一人になりたかった。何も考えたくなかった。何も感じたくなかった。しかし、レイトンがそれを邪魔する。

「問題あるよ。私の家においで、そしたら温かい紅茶が出せるよ?」
「紅茶ごときで釣られるか」
「でも、暖まらないと…」
「今は、一人で居たい気分なんだ。私に構うな」

無理矢理離すとデスコールは、また一人で歩き出した。

「何故一人になりたいんだい?」

背後から質問してくるレイトンを無視する。暫く歩くが相変わらずついて来るレイトンに痺れを切らし、

「ついて来るな」
「…そう言われてもね」
「何故だ?」
「君が行っている道は、私が帰る道だからね」
「何!?」
「ほら、そこが私の家だ」
「……」

デスコールは、なんて馬鹿なんだと自分を攻め、そのまま素通りする事に決めた。またしても、腕を捕まれる。

「…離せ」
「せっかくここまで来たんだから上がって行きなよ」
「離せ」
「このままだと本当に風邪引くよ」
「離せ」
「シャワーも貸すからさ」
「…君も随分としつこいな。エルシャール・レイトン。それでも紳士か?」
「これでも、英国紳士だよ」

デスコールは諦めた様に抵抗を止めた。今の彼に何を言おうが無駄。それに気が付いたレイトンはデスコールに向かって微笑んだ。

今の自分には、全てが無意味な時間。だったら時に身を委ねるのも良いだろう。
デスコールは、レイトンに手を引かれながら家に入って行った。


END

20100724


打っているうちに文章の意味が分からなくなってしまった…orz



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