ぷらんと 冬が終わり、ジリジリと照りつく日が多くなってきた。 このロンドンにも、もうすぐ夏が訪れようとしている。 街では、日傘をさしているご婦人やサングラスを掛けている人などを見かけるようになってきた。 そんなある日、僕は何時もの様に元気に外に出て僕の住んでいるロンドンを照り付ける太陽を眺めた。 もちろん、直になんかで眺められるわけではないから片手を目の上に付け影を作りそれでも眩しい太陽を目を細めて見ていたのだ。 うん、今日も暑くなりそうだ。 お母さんも「暑くなるから気を付けなさい」と出かける前に注意されたけど、自分で再確認。 よしっと一声小さく気合いを入れて、近所のガーデニング好きのおばあさんから貰った苗を片手に大好きな先生の元へと急いだ。 コンコンコンっと三回ノックして返事を待つ、二秒と数えない内に部屋の中から声が聞こえて僕は元気よく扉を開けて挨拶をした。 「こんにちは、レイトン先生!」 「やあ、ルーク。今日は外はとても暑かっただろう?」 はいっ!と答えた僕に、先生はじゃあ今日はアイスにして飲もうかと笑顔で問いかけてきた。 僕も紅茶を淹れるのを手伝いますと言って、手に持っていた荷物を扉の横に置き暑さで少し蒸れた帽子を外して先生のいる場所に移動した。 「先生」 「なんだい?」 「帽子蒸れないんですか?」 小さな冷蔵庫から氷を取りだしながら僕は意味の無い質問をする。 先生はどんなに暑い日差しが照りつけ様ともシルクハットはけして外さない。 そんな事は、前々から分かっている事だ。 だけどこうも狭い部屋(先生には悪いけど)の中で、暑っ苦しい帽子(本当にごめんなさい)を被られてたらそんな質問もしたくなるものだ。 先生は僕の気持ちを知っているのかいないのか、何時もの様に帽子の縁を掴みイタズラげにウィンクをした。 「どんな時でもこの帽子は外せないのだよ。英国紳士としてはね」 「はぁ」 予想通りの答えに若干気のない返事をしてしまったが、それは暑さのせいにしておこうと思った。 出来上がったアイスティーをソファーの前のテーブルに置き、僕と先生は定位置に座った。 「頂きます」 「ああ」 カラカラだった喉に冷たいアイスティーは格別だ。 ほぼ一気飲みした僕見計らって先生は声を掛けてきた。 「そういえば、そこに置いてある荷物はルークのかな?」 「…?ああっ」 一瞬なんのことか分からず二秒くらい間が空いちゃったけど、今日此処に来た理由を思いだし僕は立ち上がった。 「そうでした!先生に渡したいものがあるんです」 「私にかい」 「はい!」 扉の横に置いておいた荷物を先生がいる前の机に置き中身を袋から取り出した。 「これは、植物…?」 「きゅうりの苗です」 「そのようだね」 きゅうりの苗を目の前にして、先生のつぶらな目はさらに点になっていた。 何故、私に?と顔に書いてある先生に僕は自信気に先生の謎に答えてあげる事にした。 「先生、時代は今エコです。地球温暖化は進み南極や北極のペンギンちゃん達は毎日泣いています!」 「あ、ああ」 「そこで僕は先生にこのきゅうりをあげたいと思います。何故だか分かりますか?」 「いや、残念ながらよく分からないな」 若干引いている先生を尻目に僕は苗を片手に掲げて言った。 「プラントカーテンですよ、先生!」 「プラント、カーテン?」 レイトン先生は最初は意味が理解出来なかった様だったけどすぐに嗚呼と頷いた。 流石先生、僕の言いたい事が解ったみたいだ。 「これを窓の外に植えれば蔓が伸びて窓を覆って部屋の温度が下がります。そうすれば、クーラーいらずなので電気の節約にもなります。そしてきゅうりが菜ったら採って食べる事も出来ます。一石三鳥!僕の家もプラントカーテンをやりました。先生もやりましょう」 一気に言った僕はバックの中に入れておいたシャベルを取り出した外に出た。 先生がちょっと呼び止め様とする仕草をしたけど結局呼び止めなかった。 僕は、外側の窓の前につきガシャガシャと堀始めた。 今年の夏はこれで乗り切れるかな? 部屋から先生が顔を出してきて、きゅうりが採れたらどうしようかと話ながら心の中で思う。 コンコン (やあ、デスコール) (何なんだ、あのきゅうりは…?) (プラントシールド) (??) END 日差し避け 兼 デスコ避け 20110618 |