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今日だけ夢を見ていい日

誰にも見つからない所に二人で行こう。
例えば自由の国アメリカなんてどうだ?
毎朝珈琲を入れて窓から自由を楽しもうじゃないか。
嗚呼、中国でも良いな。
少し騒がしいが料理は美味しい。
カナダ、フランス、ドイツ、シンガポール、スペイン他にもいろいろあるな。
メキシコ、スイス、ロシア、イタリア、ノルウェー、マレーシア、ギリシャ、ポルトガル、さあ何処がいい?
なんだイギリスから離れるのが嫌なのか、エルシャール。
そうだな、だったらイングランド、ウェールズ、スコットランドのハイランド地方はどうだ?
あそこは静かで良い所だ。
なあ、エルシャール今すぐ此処から逃げよう。
何もかも忘れて二人だけで生きていこう。


研究室の窓からは、とっくに日の光が入って来ない時間。
ランプだけが点された部屋には、いつものようにお茶を楽しむ二人の姿。
一人は傍らにシルクハットが置いてあるソファーに足を組んで座り、一人はマントを揺らしながら座って紅茶を楽しんでいる男の背後に立っている。
デスコール、ソファーに腰掛けている男は自分の右肩に手を置いている男の名前を呼ぶ。
紅茶を持っていない左手で背後に居る男の手と重ねると、答えるように肩を掴んだ。

「二人で生きていく事なんて不可能だよ」
「なに、私たちを知らない所に行ければそれで良いんだ」
「ふふ、とても素敵な案だけど――」

私は、いつもと同じように此処で、同じ時間に、同じようなやり取りをして、君と過ごしたいな。
顔を背後に居る男に向けると、後ろの男はそれに合わせてソファーの背もたれの部分に両肘をつき顔を近づけた。

「つまらない男だな、レイトン。今日ぐらいは、くだらない話に付き合ってくれても良いではないか」
「いつも私に付き合ってくれないのにかい?」
「まあな」

くすくすと笑う男とくつくつと笑う男は、どちらも静かに部屋に響いた。

「デスコール」
「…なんだ?」
「私はイタリアに行きたいな」
「そうか。では、明日にでも二人で逃げようか」

ソファーに座っている男は、紅茶を受け皿に戻すと身体を少しずらし、肘をつく男に向かい合い彼の頬を右手で沿えた。

「いいね。旧市街の小さなアパートで静かに暮らすんだ」
「…海の見える所が良い」
「ふふ、じゃあ海が近くにある旧市街の小さなアパートで静かに暮らす、で良いかな?」

満足そうに口元を緩ませ、嗚呼と答えると猫のように沿えられた手の平に擦り寄った。



あと数分だけ夢をみよう


END

エイプリルフール、ネタ
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20110401



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