昼は闇、夜でも闇
「旦那様」
「……」
ロンドン、今日は霧に覆われ幻想的な夜だ。
その中に屋根の上から街を眺めてる一人の男性がいた。
少し不気味とも言える今宵の夜に似つかわしい仮面を付けた男性。
彼は、後ろの呼びかけには答えず独り言のように呟いた。
「此処から見る街はとても美しい…」
「……」
「されど、実に汚れた街。世の中は腐敗しきり、昼でも闇を見ているようだ」
彼のお付き、執事は黙って聞く。
「私にとっての人生最良の日はこの世の中から消える事かもしれないな」
男はただただ嘲笑っているだけだった。
屋根の上に立つ彼は今にもそこから飛び降りそうで執事はもう一度声を掛ける。
旦那様、と
「冗談だ。気にするな」
今度は執事に振り返りニィと笑いながら答えた。
それが言葉に対してか、行動に対しての冗談なのかは執事には分からなかった。
END
20101019
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