Dream
LOVE or HATE?(逆裁/女主/ゴドー)
「あなたが嫌いです」
目の前の女は嫌味のように紅茶の匂いを漂わせて言い放った。
「ひどく嫌いです」
「そうか、なら何故来るんだ?嫌いなんだろ?」
「えぇ、嫌いですよ。あるコメンテーターが言ってたの。ボケないために周期的に嫌いな人と会う、って」
「クッ…俺はボケ防止かよ」
ふふ、と花の咲くような笑い方をして、彼女はマグカップをテーブルに置いた。
「これくらいの使い道はあるでしょう?」
「もっと他にねぇか?コネコちゃん」
「あら、どこに飼い猫が?野良猫の間違いでなくって?」
彼女は髪をかきあげ、頬杖をついた。
「それとも、国家の犬かしら?」
「クッ…魂まで売った記憶はねぇよ」
「犬になった自覚はあるのね」
口角をあげ、彼女は紅茶を飲んだ。何かいいことがあったらしい。
「言っておくけど、いいことはひとつもなかったわ。むしろ、悪いことばかりで笑いたくなるくらい」
苛立ち気にカップを置き、乱れた髪を鬱陶しそうに耳にかけた。
「そりゃあ、災難だったなぁ」
「口先だけね」
呆れた様子で彼女はもう一度紅茶を飲んだ。
「私、やっぱりあなたが嫌い」
「じゃあもう話すことはねぇな」
彼女に背を向け、コーヒーを飲み込む。薄い香りが消えた。
「邪魔したわ」
安価なパイプ椅子が軋みながら、引いていった。ハイヒールが静かに鳴り、扉を開く音がして止まった。
「じゃあね」
「愛してるぜ、最高にな」
金属製の重い扉が閉まる音だけが、むなしく響いた。
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