版権-短編
窓ガラス越しの空(逆裁/成歩堂一家)

今日の空は灰色みたいな色をしてる。曇っている。今日は掃除だ勉強だと騒ぐ新米くんも、仕事だ魔法だと笑う娘もいない。お出かけだってさ。
そういえば、法律事務所のときにはこんなのんびりとソファーに寝転がって、空を見ることなんてなかったなぁ、なんて。…入り口が何やら騒がしいなぁ、まぁいいや。

微睡みに身を任せようと思った。

が、

「パパ、ただいまーっ」

「成歩堂さん、ただいま戻りました」

「…うん、おかえり」

「さ、みぬきちゃん」

うん!とみぬきが元気にうなずいて、買い物袋から何かを取り出した。……魔法みたいに窓ガラスが輝く!と書いてある。

「お掃除お掃除ーっ」

バタバタと2人が動き回る。開け放たれた窓から、初夏の風が吹き込む。…ニット帽脱ぎたいなぁ。

「キャーッ!パパ見て!」

「成歩堂さんすごいですよ!」

首をそらすと、窓の前で2人が立っていた。逆光で影になって、あまり表情は見えないが、楽しそうに笑っているのがわかる。

それよりも、


「あぁ、空が青いね」


その抜ける青さは、暑い陽射しの空に大きな入道雲が浮かんでいるような。向日葵が強く咲いて、太陽が輝いている。

けれどそれ以上に、僕はあの2人の笑顔がまぶしく輝いているの見えた。


『窓ガラス越しの空』


夏は近い。

ニット帽、どうしようか。


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