版権-短編
太陽と北風(逆裁/イトマコ)

「うぅ、寒いッス」

「マコくん大丈夫ッスか!?」

3月の上旬とはいえ、やはりマコの服装のパーカーにマフラーは寒い。一方の糸鋸は、薄汚いコートを羽織っている。
季節の変わり目は気温の変化が激しく、下手をしたら風邪を引く、なんていうことも無い訳ではない。

「これを着るッス」

「そんなっ!!イトノコ先輩のコートなんか恐れ多くて切れないッス!!」

「いいから着るッス」

イトノコは着ていたコートを脱ぎ、マコの身体に優しくかけた。

「す、すまないッス。自分の管理ミスで先輩のコートを……」

「大丈夫ッスよ。風邪引いたことないッスから」

そう糸鋸が言い終わるか終わらないかのうちに、冷たい北風が2人を襲った。

「わぁあっ!!」

盛大なくしゃみがマコの鼓膜を揺さぶった。見ると、糸鋸が寒そうに腕を擦っている。

「やっぱり寒いじゃないッスか!!やっぱ返すッス!!先輩に風邪引かれると、面目ないッス!!」

「だめッス!!マコくんが風邪引くッス!!」

しばらく睨み合っていると、マコが折れたようで、深いため息を吐いた。

「わかったッス。でもっ!!これはしてもらうッス!!」

マコは首に巻いていたマフラーを糸鋸の首に巻き付けた。

「くっ苦しいッス!!マコくん、苦しいッス!!」

「ご、ごめんなさいッス!!」

糸鋸は2、3回呼吸を繰り返すと、大丈夫だと言うように、ニカッと笑った。


「じゃあ、マコくん。ラーメン食べに行くッスよ」

元気な返事が冷たい空に高々と響いた。


[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!