逆転(BL)
少しは笑え(ミツナル+みぬき&王泥喜)

「成歩堂さんって結婚しないんですか?」

それはふっと思って口から意図せず出た言葉。

「みぬき、パパでもママでも平気だよっ」

素晴らしい順応性を持つみぬきが元気よく答えた。

「あははっ好きな人はいるから、安心していいよ」

成歩堂は朗らかに笑い、帽子の上から優しく叩いた。

「え、片思いなんですか?」

「うーん、どうだろうね。何年も会ってないからなぁ。…連絡は取ったりしてるけど、ま、忙しい人だからね」

「みぬき知ってるかなぁ?」

カラン、と入り口のベルが鳴った。

「オドロキ君は知ってるんじゃないかな」

え、と呆けている王泥喜を置いて、成歩堂は入り口へ来客を迎えにいった。何やら、少し騒がしいような、声が響く。

「オドロキさん、何か知らないですか?」

「し、知らないよっ」

扉が開き、そこから青いスーツの成歩堂とワインレッドのスーツとフリルタイをした男性が入ってきた。

「みぬき、紅茶を煎れてくれるかい?とびきりいいヤツを、ね。オドロキ君、紅茶は上の棚にあるから手伝ってくれないか?」

うんっと元気よく駆け出すみぬきの後ろから王泥喜が慌てたように付いていった。

「久しぶりだな、成歩堂」

「あぁ、心配かけて悪かったな」

「まったくだ。バッジを取られてから、何をしていたかと思えば、弾けないピアニストと賭けポーカーか」

「う、し、仕方ないだろ。迷惑かける訳にはいかなかったんだから」

「…知り合いに弁護士が居たのにな」

う、と成歩堂から冷や汗がだらだらと流れた。

「あ、パパが困ってる」

「あ、えっと、どうぞ」

王泥喜が紅茶をおずおずと配ると、遠慮がちに成歩堂の隣に、みぬきは軽い音を立てて御剣の隣に座った。

「電話で話しただろう?みぬきと王泥喜くんだ」

「……ム」

御剣の眉間のヒビが深くなる。正面の成歩堂が声を殺して笑っている。

「あ、あの、何でここに来たんですか!?」

みぬきが勇気を振り絞って聞いた。

「…うム、成歩堂に会いに来たのだ、嫌味を少しな」

ギロリと御剣が成歩堂を睨むと、隣で王泥喜がヒッと小さい悲鳴をあげ、成歩堂はう、とまた困り果てた顔した。

「弁護士でもなんでもない人間が助けてもらうわけにはいかないだろ?」

「ほう、では友人が弁護士でもなんでもないお人好しで、馬鹿な人間を助けてはいけない、と言うのか?」

だらだらと成歩堂が冷や汗を流す。反論する言葉も出ないようだ。否、出せる立場ではないようだ。

「いや、さすが御剣だなぁ。やっぱ口じゃ勝てないよ」

「それはそうだろう。君は法廷を何年も離れているのだからな。成歩堂が私に相談すればこうなることはなかっただろうにな」

う、とまた成歩堂が言葉を詰まらせる。王泥喜がしげしげと成歩堂を珍しそうに見つめた。

「あっみぬきわかっちゃいましたっ!!パパの好きな人って」

「わぁああストップみぬきストップ!!」

「そこの彼は気付いていないようだから、そっとしておいてくれたまえ」

えーっとみぬきが不満の声を上げた。そして数秒後に王泥喜が驚愕の悲鳴を上げた。

「ま、まさか…」

「あはは。気付いたみたいだね。気持ち悪いか?」

「いや、え、でも、えぇぇええ!?」

御剣のヒビが2割深くなったのを見て王泥喜が成歩堂の影に隠れた。それを見てさらにヒビが深くなった。

「御剣、そんなに機嫌悪くなるなよ」

「だが、」

「オドロキさん、パパから離れた方がいいですよ」

う、え、と王泥喜くんはおずおずと離れた。

「御剣、」

『少しは笑え』
(無理を言うな、と言われそう)


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あきゅろす。
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