逆転(BL)
きっとそれは僕も同じだ(ミツナル)
君は知らないだろう
どれだけ私が長い虚無の中に居続けたかを
そして
君が私に光を与え続けたのかを

お前はわからないだろうな
僕がどれだけ君を求め続けたのかを
君を探し続けたのかを

宛もなく
光もなく
朝もなく
空もなく
春もなく
夏もない

閉ざされたコンクリートの箱で、唯一君だけが私の世界にすべてをもたらした

君を失うことは世界を失うことと等しい

…気付いてはいけなかったのだ、この気持ちに

愛しい、という感情に

その感情は容易く私の世界を崩壊することができる

向日葵のように笑う君を、私は失いたくない

「…御剣?」

「あ、あぁ、すまない。で、なんだろうか」

「あ、いや、真宵ちゃんがね……大丈夫か?さっきから様子が変だぞ、お前。水でも持ってこようか?」

「いや、気にするな」

それでさ、と成歩堂は話を続ける。にこにことあの頃と変わらない、明るい笑顔だ。…成歩堂は、変わらない。それが私には、嬉しいくらい残酷だ。

「…フフ、相変わらずだな、成歩堂」

「な、なんだよ。いきなり」

「あの頃と変わらない」

琥珀色に輝く紅茶を口につける。ここに通う回数が増えるたび、私に用意される紅茶は少しずつだが、美味しくなっている。

「いや、変わったよ」

顔上げると、妙に真剣な表情をした成歩堂が、真っ直ぐ私を見ている。やけに秒針の音だけが、大きく聞こえる。

「変わったんだ。だから、僕たちはあの頃のようには、なれない」

成歩堂は笑った。たが、何故だろう。私だけは、彼が泣いているように感じた。

「今さら、ブランコには乗れないだろ?」

「ランドセルも背負えないな」

「体格の問題じゃなくて、気持ちの問題だ、だろ?」

あぁ、としか私は言えなかった。これ以上彼に私は何を言えばいいのか、わからなかったのだ。

この荒廃した世界でまだ私は彼に、光があると言えるのだろうか。

否、すべてが綺麗事と戯れ言で塗り固められた、この世界には晴れ渡る青い空はまだあるとは言えない。

けれども、

「光を求めることは、普遍的ではないのか?」

それが、禁忌と言われようとも、なんだろうと。

成歩堂が笑った。

「御剣、」

『きっとそれは僕も同じだ』

君は好きとは言わなかった


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